売上は伸びているのに利益が残らない社長へ——『超★ドンブリ経営のすすめ』に学ぶお金の流れを一枚で把握する方法

資金繰り・財務

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『超★ドンブリ経営のすすめ』(和仁 達也)
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「先月も売上は過去最高だったのに、口座残高は全然増えていない」——そんな経験をしたことはないだろうか。売上という数字だけを追いかけていると、なぜ手元にお金が残らないのかが見えてこない。決算書を眺めても、どの数字から手をつければいいかわからず、結局は税理士の一言を待つだけ。そんな”数字の霧”の中で経営判断を迫られる社長は、九州だけでも数え切れないほどいる。

本記事で紹介する『超★ドンブリ経営のすすめ』(著:和仁 達也)は、その霧を一枚の図で晴らすための本だ。難しい会計知識は一切いらない。粗利・固定費・利益のつながりを「お金のブロックパズル」として視覚化し、社長自身が「次に何をすべきか」を数字から判断できるようになる。私自身、100社以上の経営者に伴走してきた経験から、この本の考え方は現場で最も再現性が高いと断言できる。

「売上至上主義」が利益を食い尽くすメカニズム

📝 えだもんの現場視点

支援先の建設業の社長が「売上は毎年増えているのに、なぜか年末になると資金が足りなくなる」と相談してきた。試算表を確認すると、外注費が売上増加に比例して膨らんでおり、粗利率が3年で8ポイント以上落ちていた。売上の数字だけを追い、粗利率の変化を誰も見ていなかったのだ。ブロックパズルで現状を可視化した瞬間、社長の顔色が変わった。「これが問題だったのか」と。

なぜ売上が増えても手元に残らないのか

売上が上がれば利益も増えるはず——これは多くの経営者が無意識に持っている思い込みだ。しかし現実は違う。売上が増えれば、仕入れも増え、人件費も増え、広告費も増える。固定費が知らぬ間に膨らんでいると、売上の増加分がそのままコストに吸収されてしまう。

和仁氏はこの構造を「売上から利益までの”道のり”が見えていないから起きる」と説明する。売上という入り口だけを見て、途中の経路(粗利・固定費)を管理していない経営者は、結果として利益という出口を制御できない。本書の核心はまさにここにある。

「ドンブリ」という言葉に込められた意味

タイトルにある「ドンブリ経営」とは、一見すると”どんぶり勘定”のようにも読めるが、著者の意図は正反対だ。細かい数字の羅列に埋もれるのではなく、経営に本当に必要な数字だけをシンプルに把握することを指している。複雑な損益計算書を読み解く前に、まず「粗利がいくらあって、固定費がいくらかかっているか」というシンプルな構造を掴む。それが「超★ドンブリ経営」のエッセンスだ。

お金のブロックパズルとは何か

一枚の図で経営全体を俯瞰する

本書の最大の武器が「お金のブロックパズル」だ。これは売上・変動費・粗利・固定費・利益を、積み木のように横並びのブロックで表現したシンプルな図だ。棒グラフでも表でもなく、「面積」で金額の大きさを感覚的に把握できるため、数字が苦手な経営者でも直感的に理解できる。

たとえば売上1,000万円の会社であれば、変動費(仕入れ・外注費など)のブロック、粗利のブロック、そのなかに固定費(人件費・家賃・広告費など)のブロック、そして残った利益のブロックが並ぶ。この図を眺めるだけで、「固定費が粗利のほとんどを食っている」「変動費率が高すぎる」といった課題が一目でわかる。

変動費・固定費の正確な分類が鍵になる

ブロックパズルを正しく機能させるために欠かせないのが、コストを「変動費」と「固定費」に分ける作業だ。変動費は売上に連動して増減するコスト(仕入れ・材料費・外注費など)、固定費は売上に関わらず発生するコスト(人件費・家賃・通信費など)を指す。

和仁氏は本書のなかで、「この分類ができていない会社は、何をどれだけ売れば儲かるかを計算できない」と指摘する。裏を返せば、変動費と固定費を正確に把握した瞬間に、損益分岐点(BEP)が計算でき、「あといくら売れば黒字になるか」が数字でわかるようになる。ここが本書の実践的な強さだ。

粗利こそが経営の「エンジン出力」

本書が特に強調するのが「粗利(売上総利益)」の重要性だ。売上から変動費を引いた粗利は、固定費を賄い、利益を生み出す源泉となる。この粗利が薄いと、いくら売上を上げても固定費に追われるだけで利益が残らない。

粗利率(粗利÷売上)を業種平均と比較したり、商品・サービスごとに計算したりすることで、「どの事業に注力すべきか」「どの商品の価格を見直すべきか」という具体的な打ち手が浮かび上がってくる。粗利は会社の体力そのものだ、と和仁氏は言う。

数字から「次の打ち手」を決める思考プロセス

📝 えだもんの現場視点

100社以上を見てきて痛感するのは、「月次試算表を毎月受け取っているが、何を見ればいいかわからない」という経営者の多さだ。P/Lの各行を上から順に眺めるだけでは、改善の優先順位がつかない。そこでブロックパズルを使って粗利と固定費だけに絞って説明すると、多くの社長が「ようやく自分の会社の数字が見えた気がする」と言う。シンプルさが理解の速さを生む。

改善レバーは「粗利を増やす」か「固定費を削る」かの二択

ブロックパズルで現状を把握したら、次は改善の方向性を決める。本書によれば、利益を増やすための打ち手は大きく二つに集約される。①粗利を増やす(売上を上げる・変動費率を下げる・単価を上げる)か、②固定費を削る(コストを見直す・業務を効率化する)かだ。

多くの社長は「とにかく売上を増やせ」と考えがちだが、粗利率が低い状態で売上だけを追うと、労働量だけが増えて利益は増えない。本書はまず粗利率を改善し、そのうえで適切な固定費水準を維持することを推奨する。この順序の違いが、現場での成果に大きな差を生む。

目標利益から逆算して売上目標を設定する

本書の実践的なポイントのひとつが「逆算思考」だ。「今期の利益目標を500万円にしたい」と決めたら、固定費を足し合わせて必要な粗利額を計算し、粗利率で割り算すれば必要な売上目標が自動的に出てくる。

この逆算プロセスによって、「なんとなく今年は売上1億円を目指す」ではなく、「粗利率40%・固定費2,500万円であれば、目標利益500万円を達成するために売上7,500万円が必要」という根拠ある数字が生まれる。目標が具体的になれば、行動計画も自然と明確になる。

経営者が「自分で数字を読める」状態になることの価値

税理士・顧問に頼りきりにならないために

多くの中小企業経営者は、月次の試算表を税理士から受け取り、「ざっくり黒字でよかった」か「あ、赤字か」と確認するだけで終わってしまっている。しかしそれでは、問題が深刻になってから気づくことになる。

本書が目指すのは、経営者自身が「今月の粗利は先月より下がっているが、それは変動費率が上がったからだ。原因は外注費の増加だ」というレベルで数字を読めるようになることだ。数字を読む力は、経営者が持つべき最低限の「経営語彙力」だと著者は述べている。

会議・面談で数字を共有できる組織文化をつくる

お金のブロックパズルのもうひとつの強みは、社内での共有に向いていることだ。複雑なP/Lを全社員に見せても理解されないが、ブロックパズルなら「今月は固定費がこれだけかかっていて、粗利がこれだけしかない。だから全員で売上を増やす意識を持とう」というメッセージを直感的に伝えられる。

幹部や営業リーダーに数字の構造を共有することで、社員が「売上を増やすことの意味」を理解し、自主的に行動するようになる。経営者がひとりで抱え込む数字管理から、組織全体で数字を共有する文化への転換——これが本書の目指す最終ゴールだ。

この本が特に刺さる経営者のタイプ

📝 えだもんの現場視点

補助金申請の支援をする際、事業計画書に数字の根拠を求められる場面がある。粗利率・固定費・必要売上を自分の言葉で説明できる経営者と、「税理士に任せているのでよくわからない」という経営者では、審査官への説得力がまったく違う。自社の収益構造をブロックパズルで把握している社長は、どんな質問にも動じない。数字の自信は経営者の最大の武器になる。

「感覚経営」から「根拠ある判断」に移行したい人

長年の経験と勘で経営してきた社長が、事業が成長するにつれて「なんとなく」の判断では追いつかなくなってくるタイミングがある。売上規模が大きくなるほど、一つの判断ミスが与えるダメージも大きくなる。そのタイミングで本書を読むと、「自分が今まで感覚でやってきたことを、数字で裏付ける方法」として腑に落ちる経営者が多い。

補助金・融資・事業承継を控えている経営者にも必読

私が専門とする補助金申請・資金繰り改善・事業承継の場面でも、お金のブロックパズルの考え方は極めて有効だ。金融機関や支援機関に対して、自社の収益構造をわかりやすく説明できる経営者は、融資審査でも補助金審査でも圧倒的に有利になる。

また事業承継においては、後継者が「自分はこの会社の数字をどう改善するか」を語れる状態にすることが不可欠だ。その第一歩として、本書のブロックパズルは最適なフレームワークになる。数字で経営を語れる社長は、どんな場面でも信頼されるのだ。

ビジネス書を読んでも行動に移せなかった人へ

本書の大きな特徴のひとつが、「読んだその日から使える」設計になっていることだ。難しい理論書ではなく、ストーリー仕立ての事例を交えながら、実際にブロックパズルを書き込む作業が随所に出てくる。読み終わった後に手元に残るのは「自社のブロックパズル」だ。読んで終わりではなく、読みながら自社分析が完成するという構成が、行動に移しやすい理由のひとつだ。

2,000冊超のビジネス書を読んできた私が断言する。経営の数字を扱う入門書として、これほど「現場で使える」本は多くない。売上の伸びに利益がついてこない、どの数字から改善すべきかわからない——そんな課題を抱える経営者に、真っ先に手渡したい一冊だ。

明日の一手

読んだその日に動けるかどうかが、経営者としての差を生む。まずは今日、自社の数字を一枚の紙に書き出すことから始めよう。

  1. 直近1ヶ月の売上・変動費・粗利をA4用紙1枚に書き出し、粗利率を計算してみる。「粗利率=粗利÷売上×100」で算出し、業種平均と比べてみよう。数字が合わなくてもよい。「手で書く」という行為が、自社の数字への意識を変える第一歩になる。
  2. 今週中に、自社の固定費を一覧化してみる。家賃・人件費・通信費・広告費・リース料などを書き出し、合計額を出す。その合計が月間粗利の何パーセントを占めているかを計算する。この「固定費比率」が80%を超えていたら、利益を生み出す余地がほとんどないことを意味する。数字が見えると、次の行動が決まる。
  3. 1ヶ月後を目標に、毎月の「ブロックパズル更新」を習慣にする。月次試算表が届いたら、粗利・固定費・利益の3つだけを抜き出してブロックパズルを更新し、先月との変化を比べる。5分あればできる作業だ。これを3ヶ月続けると、数字の変化に敏感になり、問題が小さいうちに対処できる経営サイクルが身につく。

この記事のまとめ(Q&A)

お金のブロックパズルとは何ですか?

お金のブロックパズルとは、売上・変動費・粗利・固定費・利益を積み木のようなブロックで視覚的に表現したフレームワークです。『超★ドンブリ経営のすすめ』で紹介されており、難しい会計知識がなくても自社の収益構造を一枚で把握できます。どのコストが利益を圧迫しているかが一目でわかり、次の経営判断を数字に基づいて下せるようになります。

売上が増えているのに利益が残らない原因は何ですか?

売上が増えても利益が残らない主な原因は、粗利率の低下と固定費の肥大化です。売上増加に伴い外注費や人件費が比例して増えていると、粗利が薄いまま固定費に吸収されてしまいます。『超★ドンブリ経営のすすめ』では、まず変動費と固定費を正確に分類し、粗利率を把握することが改善の第一歩だと解説されています。

経営の数字を自分で読めるようになるにはどうすればいいですか?

まずは売上・粗利・固定費・利益という4つの数字だけに絞って毎月確認する習慣をつくることが近道です。複雑な損益計算書をすべて読もうとする必要はありません。『超★ドンブリ経営のすすめ』のブロックパズルを使えば、試算表が届いた月に5分で現状を把握できます。この習慣を3ヶ月続けることで、数字の変化に敏感になり、問題が大きくなる前に手を打てる経営感覚が養われます。

この記事の根拠と執筆背景

執筆者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。

執筆・更新日

執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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