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『超★ドンブリ経営のすすめ』(和仁 達也)
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「売上は上がっているのに、なぜか手元にお金が残らない」
「税理士の先生から試算表を渡されても、どこを見ればいいかわからない」
「利益が出ていると聞いたのに、口座残高はいつもギリギリ……」
こんな悩みを抱えながら、今日も現場を走り続けている社長は少なくない。私がこれまで九州を中心に100社以上の経営者に伴走支援をしてきた中で、「数字が苦手」という経営者は驚くほど多い。いや、正確に言えば、数字そのものが苦手なのではなく、「どの数字を、どう読めばいいか」を誰も教えてくれなかった、というのが実態だ。
そのモヤモヤを一冊で吹き飛ばしてくれるのが、今回紹介する『超★ドンブリ経営のすすめ』(和仁 達也 著)だ。タイトルだけ見ると「どんぶり勘定を推奨する本?」と思うかもしれないが、中身はまったく逆。どんぶり勘定になりがちな経営者の頭を、最小限の数字で「見える化」するための実践的な一冊だ。
「どんぶり経営」は悪いことじゃない。問題は”見えていない”こと
📝 えだもんの現場視点
支援先の建設業の社長から「うちの固定費、いくらですか?」と聞いたとき、「うーん、税理士に聞かないとわからない」と返ってきた。売上は年間1億円を超えているのに、自社の月次コストを把握していなかった。その場で一緒に人件費・家賃・リース料だけを書き出すと、月280万円という数字が初めて見えた。「これを下回ったらアウトなんですね」——その一言から、経営の話が一気に深まった。
「どんぶり」の定義を正しく理解する
本書の著者・和仁達也氏は、経営者専門のコンサルタントとして数百社以上を支援してきた実績を持つ。その経験から断言する。「どんぶり経営が悪いのではない。見えていない状態が危険なのだ」と。
多くの中小企業の社長は、細かい財務分析よりも、営業・商品開発・採用など「現場のこと」に全力を注いでいる。それ自体はまったく正しい。問題は、お金の流れに”無頓着”になることで、気づかないうちに経営の土台が揺らいでいくことだ。
試算表や決算書を見ても「わかった」にならない理由
税理士から渡される試算表には、数十行にわたる勘定科目がズラリと並んでいる。「売上高」「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業利益」……。これを見て即座に経営判断ができる社長は、正直なところほとんどいない。
なぜか。それは、試算表は「記録のための書類」であって、「経営判断のための書類」ではないからだ。和仁氏はこの点を明快に整理し、社長が本当に見るべき数字は「たった数個」に絞れると主張する。この主張が、数字に苦手意識を持つ経営者にとって、どれほど救いになるかは計り知れない。
社長が見るべき数字は「たった3つの箱」で整理できる
「どんぶり勘定シート」という革命的なシンプルさ
本書の核心は、「どんぶり勘定シート」と呼ばれるフレームワークにある。難しい財務諸表を一切使わず、会社のお金の流れを3つの要素に分解する。
- ①売上(入ってくるお金)
- ②コスト(出ていくお金)
- ③残るお金(利益 ≒ キャッシュ)
これだけ、と言うと「そんな単純な話では……」と思うかもしれない。だが和仁氏の真骨頂は、この3つの箱を経営者が自分の言葉で語れるレベルまで落とし込むところにある。たとえばコストを「固定費」と「変動費」に分けて考えることで、「売上がこれだけ落ちたら赤字になる」という損益分岐点の感覚が自然と身につく仕組みだ。
「固定費」を把握するだけで経営感覚が変わる
本書が特に強調するのが固定費の把握だ。固定費とは、売上がゼロでもかかり続けるコスト――家賃、人件費、リース料、保険料などのこと。この固定費の合計額を「月次の最低ライン」として頭に入れておくことが、経営者の最低限の数字リテラシーだと著者は言う。
私自身、支援先の経営者にヒアリングをすると、「うちの固定費、月いくらですか?」という質問に即答できる人はごく少数だ。これが答えられると、「今月あと何件受注すれば安全か」が直感的にわかるようになる。数字が苦手な社長でも、この一点だけ押さえれば、経営の土台感覚は劇的に変わる。
「お金が残らない」を解決するキャッシュフロー思考
利益とキャッシュは「別物」という真実
本書が丁寧に解説するもう一つの重要テーマが、「利益」と「キャッシュ(現金)」の違いだ。損益計算書(P/L)上は黒字なのに、手元の現金が足りない——いわゆる「黒字倒産」のメカニズムがここにある。
たとえば、売上が計上されても入金は翌月・翌々月になる(売掛金)。設備を購入した分は費用ではなく資産に計上されるが、現金はすでに出ていく(減価償却と資本的支出のズレ)。借入金の返済は費用にならないが、確実に現金を減らす(元本返済)。
和仁氏はこれらを難しい会計用語を使わず、「なぜ利益が出ているのに現金がなくなるのか」を経営者の言葉で説明してくれる。読み終えると「あ、あの時のうちの会社の状況はこういうことだったのか」と腑に落ちる経営者が続出するはずだ。
「資金繰り表」は難しくない——月次の現金残高を追う習慣
私がCFOとして支援する際、最初に整備するのが資金繰り表だ。しかし「資金繰り表」と聞いただけで身構える社長が多い。本書ではその入門として、「今月末の現金残高を予測できるか?」という問いから入る。
今月の入金予定と出金予定を書き出す。それだけでいい。この習慣が身につくだけで、「口座を見てドキッとする」頻度は格段に減る。資金繰りの改善は、小難しい分析の前に、まず「見る」習慣から始まるのだ。
数字を武器にする社長が実践している「3つの習慣」
📝 えだもんの現場視点
融資の面談に同席したとき、銀行担当者が「御社の損益分岐点はどのくらいですか?」と聞いた。社長は「えっと……」と詰まってしまった。決算書の数字は整っていたのに、その一言で担当者の表情が曇った。後日、どんぶり勘定シートを使って固定費と変動費を整理し、「月売上〇〇万円で黒字」と答えられるよう準備した。次の融資面談では、同じ質問にスラッと答えられ、担当者の反応が明らかに変わった。
①月に一度、「3つの箱」だけを確認する
本書が推奨する実践習慣の一つ目は、月次で「売上・コスト・残るお金」の3つだけを確認すること。試算表を全部読む必要はない。ポイントとなる数字だけをメモ一枚に書き出す習慣が、「数字から逃げない経営者」への第一歩だ。
②「口頭で説明できるか」を基準にする
和仁氏が本書で繰り返し強調するのが、「自分の言葉で説明できるか」という基準だ。税理士や顧問コンサルタントの説明を「なんとなく聞いている」状態では、経営判断には使えない。「うちの固定費は月〇〇万円で、損益分岐点の売上は〇〇万円です」と社員や銀行に説明できるレベルが目標だ。
③数字に「感情のラベル」を貼る
本書のユニークな視点として、数字を「感情と結びつける」というアプローチがある。「固定費月300万円」という数字を単なる数値として見るのではなく、「これがゼロになったら何名の社員を抱えられるか」「この数字を下回ったら自分はどう感じるか」と問いかける。感情と数字が結びつくことで、数字は初めて「自分事」になる。これは、数字が苦手な経営者ほど効果的なアプローチだ。
えだもんの現場視点:100社以上を見てきて気づいたこと
「数字が苦手」は才能の問題ではなく、習慣の問題だ
中小企業診断士として九州を中心に100社以上の経営者に伴走してきた私が、本書を読んで真っ先に思ったのは「これは私が現場で言い続けてきたことだ」ということだ。
数字が得意な社長と苦手な社長の差は、頭の良し悪しでも勉強量でもない。「数字を見る習慣があるか、ないか」——ただそれだけだ。本書は、習慣を変えるための最短ルートを提供してくれる。
補助金・融資審査でも「数字を語れる社長」は圧倒的に強い
私が専門とする補助金申請や融資支援の現場でも、本書の内容は直結している。審査担当者や金融機関の担当者が見ているのは、決算書の数字だけではない。「この社長は自社の数字を理解しているか」という点を、会話の中で必ず確認している。
事業承継・法人化でも「数字の見える化」は土台になる
事業承継や法人化の相談を受ける際、最初につまずくのは「今の会社の数字が整理されていない」という問題だ。後継者に引き継ぐにしても、法人成りのタイミングを判断するにしても、現状の「入り」と「出」と「残り」が見えていなければ、何も始まらない。本書のどんぶり勘定シートは、そのゼロ地点から始めるための最良の道具だと確信している。
この本を読んで、明日から何を変えるか
📝 えだもんの現場視点
法人化を検討していた飲食店の個人事業主が「そろそろ法人にしたほうがいいですか?」と相談に来た。最初に「今の月の売上と経費、教えてもらえますか?」と聞くと、「どんぶりで……」という答え。レシートと通帳コピーを持ち寄り、たった30分でどんぶり勘定シートを埋めると、法人化の判断軸が見えた。数字が整理されて初めて、「いつ、どう動くか」という意思決定ができる。これが経営の現実だ。
数字は「怖いもの」ではなく、「味方にできるもの」
本書を読み終えたとき、多くの経営者が感じるのは「なんだ、そういうことか」という安堵感だろう。難しい財務理論でも、厳しいコンサルタントの指摘でもなく、「あなたが見るべき数字はこれだけです」という穏やかな宣言が、この本の最大の価値だ。
数字から逃げてきた時間は、今日から取り戻せる。まず一冊、手に取ってみてほしい。
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『超★ドンブリ経営のすすめ』(和仁 達也)
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明日の一手
本を読んで「いい話だった」で終わらせないために、今日から動ける3つのアクションを提案する。小さく始めることが、習慣を変える唯一の方法だ。
- 自社の「固定費リスト」を紙1枚に書き出す。家賃・人件費・リース料・通信費・保険料など、売上がゼロでもかかるコストだけを列挙し、合計額を出す。この一枚が、あなたの経営の「床」になる。
- 先月の売上・固定費・変動費の概算をメモ帳かスプレッドシートに書き出し、「残ったお金(≒利益)」を自分で計算してみる。試算表を使わなくていい。どんぶりで構わない。「自分で計算する」という行為が、数字を自分事にする第一歩だ。
- 月末に5分間だけ「今月の3つの箱チェック」の時間を設ける習慣をつくる。カレンダーに「数字チェックデー」として登録し、売上・コスト・残るお金の3つだけを確認するルーティンを1ヶ月間続ける。この習慣が定着すれば、あなたは「数字が苦手な社長」を卒業できる。
この記事のまとめ(Q&A)
数字が苦手な社長が最初に押さえるべき数字とは?
『超★ドンブリ経営のすすめ』では、会社のお金の流れを「売上(入ってくるお金)」「コスト(出ていくお金)」「残るお金(利益≒キャッシュ)」の3つの箱で整理します。試算表を隅々まで読まなくても、この3つを月に一度確認すれば経営判断の土台になります。数字が苦手な状態は、どの数字をどう読めばよいかを教わっていないことが原因だと記事では述べています。まずは3つの箱を自分の言葉で説明できる状態を目指します。
固定費を把握するには?
固定費とは、売上がゼロでもかかり続けるコストのことで、家賃・人件費・リース料・通信費・保険料などが該当します。紙1枚にこれらを書き出して合計額を出すと、月次の最低ラインが見えてきます。この金額がわかると、今月あと何件受注すれば安全かを直感的に判断できるようになります。固定費と変動費を分けて考えることで、損益分岐点の感覚も身につきます。
利益が出ているのに手元にお金が残らないのはなぜ?
損益計算書上の利益と手元の現金(キャッシュ)は別のものだからです。売上が計上されても入金が翌月以降になる売掛金、設備購入による先行した現金の支出、費用にならないものの現金を減らす借入金の元本返済などが原因になります。この状態を避けるには、今月の入金予定と出金予定を書き出し、月末の現金残高を予測する習慣を持つことが入口になります。
この記事の根拠と執筆背景
執筆者について
枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。
執筆・更新日
執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

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