節約、投資、転職、副業。お金を増やす助言は数多くありますが、言っていることが人によって違います。『THE WEALTH LADDER 富の階段』は、その原因を助言の間違いではなく、助言が想定している「資産の段」の違いに求めます。
この記事は、本要約チャンネル「エダモン」の要約動画(約22分)を、読んで確かめられる形に整理したものです。要点の表、FP・中小企業診断士としての置きかえ手順、向く人・向かない人、動画の該当章へ飛べる時刻表を加えています。
📖 この記事で紹介する書籍
『THE WEALTH LADDER 富の階段』(ニック・マジューリ/児島修 訳/ダイヤモンド社)
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『THE WEALTH LADDER 富の階段』の要約を3行で
- お金の使い方は絶対額ではなく、現在の資産に対する割合で判断します。
- 資産額を6つのレベルに分けると、いま優先すべき行動と次に得られる自由が見えてきます。
- 節約、キャリア、投資のどれを重視するかは段によって変わり、共通する鍵は収益を生む資産です。
動画で見る(約22分)
動画では、中小企業診断士・FPのエダモンが、0.01%ルール、富の6段階、段ごとの具体策を約22分で順に解説しています。全体像と話の流れは動画でつかみ、6段階の金額や自分が取る手順はこの記事の表と番号付きリストで確認してください。
| 時刻 | 章 | この記事の該当見出し |
|---|---|---|
| 1:18 | クレオパトラの | どんな本か |
| 3:15 | 驚くほど単純な物差しです | 資産で判断する0.01%ルール |
| 5:37 | 6つの段と、 | 6つの段と手に入る自由 |
| 7:55 | 収入ではなく、 | 段ごとに変わる正解 |
| 10:45 | 段ごとの、 | 段ごとに変わる正解 |
| 14:51 | この本の答えは、 | 投資と浪費を資産の側から見る |
| 16:57 | 54年間の家計調査が | 投資と浪費を資産の側から見る |
| 18:28 | 最終章|どれも、ある段には正しい | 段ごとに変わる正解 |
どんな本か
万人向けの正解に線を引き直した本
著者のニック・マジューリさんは、前作『ジャスト・キープ・バイイング』が世界的に読まれたデータサイエンティストです。本書では、その前作について「富の階段」のレベル2から3にいる人向けだったと説明しています。
つまり、同じお金の助言を全員に当てはめることはできません。現在の資産額によって、節約、収入アップ、投資の優先順位は変わります。本書は資産額を6つのレベルに分け、それぞれの段に適した考え方と戦略を示します。
中心にあるのは、「あなたは今、どの段にいるか」という問いです。位置が決まれば、世の中のお金の情報を自分向けか、別の段の人向けかで仕分けられるようになります。
クレオパトラの真珠が示す相対性
本は、エジプトの女王クレオパトラとローマの将軍アントニウスの賭けから始まります。クレオパトラは、1回の食事に1000万セステルティウスを使うと言いました。現在の価値でおよそ2000万ドルです。
翌日の晩餐会は、見たところ普段と変わりませんでした。クレオパトラは、当時世界で最も価値があるとされた真珠をイヤリングから外します。それを強い酢に入れて溶かし、飲み干しました。もう片方の真珠に手をかけたところで、アントニウスは負けを認めます。
この話が示すのは、同じ2000万ドルでも、持っている富によって重さが変わることです。クレオパトラは、自分の富にほとんど影響を与えずに真珠を飲み干せました。支出の意味は金額だけで決まらず、使う人の資産との関係で決まります。
資産で判断する0.01%ルール
何も考えずに使える金額を計算する
支出の相対的な重さを測るために、著者が提示するのが「0.01%ルール」です。自分の資産の1万分の1を、何も考えずに使える金額の目安とします。
| 資産 | 資産の0.01% | 判断 |
|---|---|---|
| 100万円 | 100円 | この金額までなら悩まずに使う |
| 1000万円 | 1000円 | この金額までなら悩まずに使う |
| 1億円 | 1万円 | この金額までなら悩まずに使う |
資産が1000万円なら、1000円までの支出で経済状況はほとんど動きません。1000円以下の買い物を毎回考え直すより、それを超える支出だけで立ち止まるという使い方です。
線があることで迷う回数が減る
本には、この考え方のきっかけになったジェイ・Zさんの歌詞が紹介されています。歌詞を書いた2011年当時、推定資産は4億5000万ドルでした。歌詞に登場する5万ドルは、その約0.01%です。
資産1000万円の人にとっての1000円と、当時のジェイ・Zさんにとっての5万ドルは、資産に占める割合では近い重さになります。絶対額だけを見れば大差がありますが、本人の経済状況への影響で見れば同じ物差しに載せられます。
著者は0.01%を絶対的な基準ではなく、目安として提示しています。この数字の役割は、支出に完全な正解を出すことではありません。「なんとなく高い」「今月は使いすぎた気がする」という感覚に、判断の境界線を置くことです。
FPとして見ると、家計で人を消耗させるのは金額だけではなく、判断の回数です。コーヒーや服を買うたびに迷う状態では、一日を通じて判断のエネルギーを使います。あらかじめ線を決めておけば、小さな支出を何度も考え直さずに済みます。
6つの段と手に入る自由
資産額を生活上の自由に読み替える
本は資産額を6つに分け、各レベルに「余裕なし」「食料品の自由」といった名前をつけています。金額だけを並べるのではなく、その段で生活の何が自由になるかを示している点が特徴です。
| レベル | 資産額 | 名称 | 0.01%で自由に使える額 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1万ドル未満 | 余裕なし | 1ドル未満 |
| 2 | 1万ドル以上10万ドル未満 | 食料品の自由 | 1ドルから9ドル |
| 3 | 10万ドル以上100万ドル未満 | レストランの自由 | 10ドルから99ドル |
| 4 | 100万ドル以上1000万ドル未満 | 旅行の自由 | 100ドルから999ドル |
| 5 | 1000万ドル以上1億ドル未満 | 住居の自由 | 1000ドルから9999ドル |
| 6 | 1億ドル以上 | 影響力の自由 | 1万ドル以上 |
レベル1では自由に使える額が1ドル未満なので、ほぼすべての支出に判断が必要です。レベル2では、スーパーで品物を選ぶときに値段をあまり気にしなくてよくなります。
レベル3では、レストランで20ドルのハンバーガーと30ドルのサーモンの差に迷わなくなります。10ドルの差が資産の0.01%より小さくなるためです。レベル4では、旅行の行き先や座席を値段だけで決めずに済む範囲が広がります。
次の目標を金額ではなく体験で捉える
資産形成の目標は、「あといくら必要か」という数字だけになりがちです。本書の6段階を使うと、「次に生活の何が自由になるか」に置き換えられます。食料品、レストラン、旅行といった体験なら、資産を増やす意味を日常生活と結びつけられます。
本は、隣り合う段の暮らしがよく似ていることも指摘します。レベル3とレベル4には資産で10倍の差があります。それでも、レベル4の人に良い車や大きな家があったとしても、お抱えの運転手や自家用機があるとは限りません。
そのため本は、レベル3を中流階級、レベル4を上流中流階級と呼びます。10倍の資産差があっても、日々の暮らしで見える景色がすべて入れ替わるわけではありません。
段ごとに変わる正解
生活の基準は収入より資産に置く
本が強く指摘する問題は、多くの人が資産ではなく収入に基づいてお金を使っていることです。給料が上がれば生活水準を上げ、ボーナスが出れば使う。入ってくる金額が支出の基準になっています。
著者は、使ってよい額を決める基準を資産に置きます。収入は体調や会社の事情で止まることがあります。収入を基準に固定的な生活を組むと、止まる可能性があるものの上に生活を建てることになります。
これは事業にも似た構造があります。売上は変動しても、固定費は同じ速さでは減りません。個人の家計でも、変動しうる給料を基準に家賃や保険などの固定費を決めれば、収入が下がったときに苦しくなります。
レベル1と2では稼ぐ力を優先する
レベル1について、本は真の問題を支出ではないと捉えます。資産が1万ドル未満の段では、節約だけで動かせる金額に限りがあります。収入が増えれば効果が毎月続くため、貯蓄できるように収入を増やすことを優先します。
本が勧めるのは、誰かがお金を払ってくれる市場価値のあるスキルを身につけることです。ただし、スキルの習得に費用をかけすぎないよう注意を促します。収入を増やすために多額の借金をする必要はありません。
著者が示す出発点は、まず仕事に就いて懸命に働くことです。同僚より良い成果を出せるようになれば、学ぶ機会も増えます。本には、低賃金の仕事で努力を続け、評価を得て貧困から抜け出した人の話を数えきれないほど読んできたと書かれています。
一方、レベル1で避けるべきものとして挙げられるのが、自分にとって価値のない卒業証書のための多額の借金です。教育そのものには大きな価値があっても、すべての教育に等しい価値があるわけではありません。本では、ある世代の大卒者の半数以上が、専攻や多額の学費を払ったことを後悔しているという調査も紹介されます。
レベル2は、教育とスキルの段です。この段では、投資から得る収益より、自分の稼ぐ力を高めたときの効果が大きいため、キャリアに集中することが重要になります。
仕事を選ぶ基準は、得意なこと、興味があること、人がお金を出してくれることの3つです。得意と興味で迷ったときは、まず得意なことを重視します。成果を認められることで、後から興味が育つ場合があるからです。
レベル3から投資が主役になる
レベル3で、投資が資産形成の主役になります。本に出てくる、毎年1万ドルを投資して資産200万ドルに到達したケースでは、最初の100万ドルまでに30年以上かかりました。その後は資産の増加が加速しています。
長い停滞期があり、後半になって増え方が変わる。この形を知っていれば、序盤の動きだけを見て途中でやめる可能性を抑えられます。
前作で示された「ジャスト・キープ・バイイング」、つまり買い続ける戦略は、レベル2から3にいて、レベル3から4を目指す人向けだと著者は説明します。その戦略でレベル4を超えることも可能ですが、極めて高い収入と極めて長い期間が必要です。上の段に進むには、別の戦略が必要になります。
固定費を削る、キャリアに集中する、投資を続けるといった助言は、それぞれ特定の段で有効です。想定している段を外せば、正しい助言も自分には役立たないことがあります。
投資と浪費を資産の側から見る
万能の投資方法はない
「何に投資すればいいのか」という問いに対し、本は正解が一つではないと答えます。著者は2012年以降、投資に関する本を数多く読み、10年近くこのテーマで書いてきました。それでも、万能の解決策は見つかっていないと述べています。
現物を所有して管理する不動産が合う人もいれば、手間のかからないインデックスファンドを好む人もいます。自分で事業を経営したい人もいれば、他人に任せたい人もいます。方法は、その人の好みによって変わります。
共通点は、収益を生み出す資産を持つことです。本によれば、上の段と下の段を分ける違いは、収益を生む資産をどれだけ持っているかにあります。給料は働いている間に入りますが、収益資産は本人が働いていない間にも収益を生む可能性があります。
自分に合う方法を選ぶ理由は、続けるためです。理屈のうえで良さそうな方法でも、性格に合わず、値下がりしたときにやめれば、その方法を選んだ意味が失われます。自分が継続できるかどうかも、投資方法を考える要素になります。
上がることと同時に落ちない設計を考える
本には、54年間にわたって同じ世帯を追った大規模な家計調査を使った分析が引かれています。そこで示されるのは、浪費が経済生活に与える打撃の大きさです。
0.01%ルールで自由に使える額は、資産に比例します。資産が減れば、何も考えずに使える金額も小さくなります。一度上がった段から落ちることは、数字だけでなく、生活上の自由が縮むことを意味します。
生活水準を上げることに時間はかかりません。良い家、良い車、良い店にも早く慣れます。しかし、家や車には契約があり、本人の感覚もすぐには戻りません。生活水準を下げるときは、上げたときと同じ速さでは進められないのです。
この点からも、収入が増えたことだけを理由に支出を増やさず、資産を基準に使う意味が見えてきます。段を上がる方法とともに、現在の段から落ちにくい支出の水準を考える必要があります。
お金の助言は想定する段を確かめる
インデックス投資、持ち家、副業、固定費、保険について、世の中にはさまざまな助言があります。どれも、ある段にいる人には適切で、別の段にいる人には合わない可能性があります。
人によって言うことが違うとき、違うのは意見だけとは限りません。想定している資産の段が異なる場合があります。本書は、助言の前提になっていた現在地を表に出しました。
情報が多すぎて動けないときは、すべてを取り入れる必要はありません。自分の段を決め、その情報が自分の段に向けられたものかを確かめます。位置が決まれば、必要な情報の範囲も絞りやすくなります。
家計と仕事に置きかえる手順
ここからは本に書かれている内容ではなく、FP・中小企業診断士としての置きかえです。本の0.01%ルールと6段階を、家計や仕事の判断に使う順番として整理します。
- 現在の資産の1万分の1を出す:資産に0.0001を掛けます。その金額までの買い物では悩まず、それを超える支出で立ち止まるという境界線を決めます。
- 現在の段を一度決める:本のドル建ての区分に照らし、6つのうちどこにいるかを確認します。数字を頻繁に見直すより、まず現在地と優先課題を対応させます。
- 次に得たい自由を言葉にする:食料品、レストラン、旅行など、次の段で自由になる体験を確認します。資産額だけでなく、暮らしの何を変えたいかを目標にします。
- 段に合った行動へ絞る:レベル1なら、費用をかけすぎずに市場価値のあるスキルを身につけます。レベル2なら、得意、興味、対価の3つが重なる仕事を探し、稼ぐ力を優先します。レベル3なら、自分が継続できる投資方法を考えます。
- 学びへの借金を先に検討する:資格や学び直しに借金が必要なら、その資格を持つ人が実際にどれだけ稼いでいるかを確認します。これは本の記述を踏まえたFPとしての判断基準です。
- 流れてくる情報を段で仕分ける:「これは自分の段向けか、別の段向けか」と確認します。全部を取り入れず、現在の段で優先する行動に合うものを選びます。
中小企業では売上と固定費を分けて考える
事業では、変動する売上を前提に固定費を増やすと、売上が下がったときに負担が残ります。個人が給料の増加だけを見て固定費を増やす場合と同じ構造です。
経営者は、現在の売上だけでなく、保有する資産と、収益を生む資産がどれだけあるかも確認します。売上が増えた局面ほど、固定費を上げた後でも現在の段から落ちにくいかを検討します。
読むときの注意点
- 0.01%ルールは著者が示した目安であり、すべての支出に当てはまる絶対的な基準ではありません。
- 6段階の資産額はドル建てです。日本の物価や税制を織り込んだ区分ではないため、現在地を考える目安として使ってください。
- 投資に万能の方法はないというのが本の立場です。投資の成果は保証されず、方法は本人の性格や状況に合わせて確認する必要があります。
- レベル1で収入を増やすという助言は、無理なリスクや多額の借金を勧めるものではありません。本は取り返しにくいリスクを避け、スキル習得に費用をかけすぎないよう注意しています。
- 毎年1万ドルを投資したケースや54年間の家計調査は、本で紹介される分析です。すべての人が同じ経過や結果になることを保証するものではありません。
- 本は6つのレベルそれぞれに章を設けています。自分の段より上の戦略だけを取り入れず、まず現在地に対応する章から読む必要があります。
この本が向く人・向かない人
| 向く人 | 向かない人 |
|---|---|
|
|
今日からできる3つ
- いまの資産に0.0001を掛け、その金額までの買い物は悩まないと決めます。
- 自分が6つの段のどこにいるかを決め、次の段で得られる自由を確認します。
- 流れてくるお金の情報を、自分の段向けか別の段向けかで仕分けます。
記事と動画では、6つの段それぞれの詳しい戦略、収入を増やす方法の比較、仕事を選ぶ3つの基準、上の段で待つ落とし穴までは扱いきれていません。『THE WEALTH LADDER 富の階段』は、自分の段に対応する章を読み、状況が変わったときに次の章へ進む使い方ができるため、手元に置いて現在地を確かめる価値があります。
▶ お金の名著を30分で。YouTube「エダモン|本要約チャンネル」
中小企業診断士・FPのエダモンが、お金の名著を原典に沿って要約し、日本の暮らしと会社のお金に置きかえて解説しています。どの回も1本で完結します。
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この記事のまとめ(Q&A)
0.01%ルールとは何ですか。
自分の資産の1万分の1を、何も考えずに使える金額の目安とする考え方です。著者は絶対的な基準ではなく、支出で迷う回数を減らすための目安として示しています。
富の階段は何を基準に分かれていますか。
資産額を基準に6つのレベルへ分けています。各段には、食料品の自由、レストランの自由、旅行の自由など、生活のどこが自由になるかを示す名前があります。
収入が増えたら生活水準を上げてもよいですか。
『THE WEALTH LADDER 富の階段』は、使ってよい額を収入ではなく資産で考えます。収入は止まる可能性があるため、増えた収入だけを基準に固定費を増やすと、後から負担が残る場合があります。
資産が少ない段でも投資を優先すべきですか。
本は、レベル1では支出削減や投資より、貯蓄できるように収入を増やすことを重視します。レベル2では教育、スキル、キャリアに集中し、レベル3から投資が主役になります。
どの投資方法が正解ですか。
本は、万人に共通する万能の方法はないとしています。不動産、インデックスファンド、事業などから本人に合う方法を考え、収益を生む資産を持つことを共通点として挙げています。投資成果は保証されないため、自分の状況に合わせた確認が必要です。
この記事の根拠と執筆背景
執筆者について
枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。
執筆・更新日
執筆: 2026-10-04 / 最終更新: 2026-10-04

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