働き続けないとお金が回らない不安を抱える経営者へ——『ファイナンシャル・フリーダム』に学ぶ富の4原則と7段階で経済的自由を手に入れる方法

お金・資産形成

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『ファイナンシャル・フリーダム』(ボード・シェーファー)
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「会社を休んだら、その日から収入が止まる」——そんな感覚を持ちながら毎日働いている経営者・個人事業主の方は少なくありません。売上は立っている、従業員もいる、でもなぜかいつも資金繰りに追われていて、「自分が倒れたら終わり」という恐怖が頭の片隅から消えない。

私はこれまで中小企業診断士・伴走型CFOとして九州を中心に100社以上の経営者に寄り添ってきましたが、この「経済的な不安」を抱えたまま走り続けている経営者の多さに、何度も胸を痛めてきました。

今回ご紹介するのは、ボード・シェーファー著『ファイナンシャル・フリーダム』です。14年間でビジネス書を2,000冊以上読んできた私が、「お金の不安を根本から解消したい経営者に最初に読んでほしい一冊」として自信を持って推薦できる書籍です。本書が示す富の4原則と7段階のロードマップは、経営者としての視点で読むと、驚くほど実務に直結します。

なぜ「働けば働くほど不安になる」のか

📝 えだもんの現場視点

支援先の建設業の社長が、年商2億を超えても「お金が残らない」と悩んでいました。財務を一緒に整理すると、個人の資産形成がほぼゼロ。役員報酬は取っているのに、手元には残っていない。「会社のお金と自分のお金の境界線が曖昧なまま10年走ってきた」と本人も気づいていませんでした。この状態こそ、シェーファーが言う「ラットレース」そのものです。

収入と自由が反比例するトラップ

多くの経営者は「もっと売上を伸ばせば安心できる」と信じて、がむしゃらに働きます。ところが売上が増えれば経費も増え、人件費も増え、結局手元に残るお金は変わらない——いや、むしろリスクが大きくなっている、という状況に陥ります。

シェーファーはこの状態を「ラットレース(鼠の回し車)」と表現します。どれだけ速く走っても、車輪の外に出られない。収入を得るために働き、働くために生きているような感覚。これは怠慢ではなく、お金の仕組みを知らずに走っているから起きることだと本書は指摘します。

「収入=労働時間」という呪縛を解く

経営者の多くは、無意識のうちに「自分が動かなければ収入が生まれない」という前提で事業を設計しています。これは雇われている時代のメンタルモデルをそのまま持ち込んでいる状態です。

本書が最初に問いかけるのは「あなたが働かなくても、お金が入ってくる仕組みを持っているか?」という一点です。この問いに即答できない経営者は、まだ経済的自由への道が描けていないとシェーファーは言います。厳しい言葉ですが、これが出発点です。

富の4原則——お金持ちが共通して実践していること

原則①:収入の一部を必ず自分に支払う

本書の中心概念のひとつが「Pay Yourself First(まず自分に払え)」という考え方です。入ってきたお金から経費や税金を引いた残りを貯める、ではなく、収入が入ったら最初に一定割合(本書では最低10%)を自動的に自分の資産形成口座に移す。この順序の逆転が、富の土台をつくる最初の一手です。

経営者の場合、売上から仕入れ・人件費・諸経費を払った後に「残ったら自分の取り分」という構造になりがちです。でもそれでは、永遠に自分への投資が後回しになります。シェーファーはこの習慣を「富の自動化」と呼び、感情や意志力に頼らず仕組みで貯まる状態を作れと説きます。

原則②:複利の力を最大化する

「複利は世界8番目の不思議だ」——アインシュタインの言葉として知られるこのフレーズを、シェーファーは数字で徹底的に可視化します。月5万円を年利8%で20年間運用すると、元本1,200万円が約2,900万円になる。時間とお金を掛け合わせることで、労働なしに資産が成長する。

経営者にとって複利の発想は、事業の「仕組み化」と同じ構造です。一度作った仕組みが自動的に利益を生み続ける——まさに経営の理想形と重なります。本書はこの感覚を「お金の世界でも同じことをせよ」と背中を押してくれます。

原則③:収入の流れを多様化する

シェーファーが強調するのは「収入源はひとつであってはならない」という原則です。事業収入だけに依存している状態は、最もリスクが高い。本書では不動産、配当、ロイヤリティ、事業収益など複数の「収入の川」を持つことを勧めています。

これは経営者の「事業の多角化」とは少し違います。あくまで自分が動かなくても入ってくる収入(パッシブインカム)の流れをいくつ持てるか、が焦点です。一本の川が干上がっても、別の川が流れていれば生活は守られる——これが経済的自由の実態です。

原則④:支出をコントロールし、資産を買い続ける

本書が定義する「資産」と「負債」の区別は明快です。資産とはあなたのポケットにお金を入れてくれるもの、負債とはポケットからお金を取り出すもの。高級車も豪邸も、それがお金を生まないなら「負債」です。

シェーファーは「支出を削れ」とは言いません。むしろ「まず資産を買い、その資産が生む収入で好きなものを買え」と言う。この順番を守るだけで、お金の流れが根本から変わります。

7段階のロードマップ——どこにいるかを知ることが最初の一歩

📝 えだもんの現場視点

100社以上を見てきて確信しているのは、経済的に安定している経営者ほど「恐怖ベースの決断」をしないということです。資金繰りに追われている経営者は、補助金も融資も「今月を乗り切るため」に使いがちです。一方、個人資産の土台ができている経営者は「この投資で3年後に何が変わるか」を落ち着いて考えられる。判断の質が根本から違うのです。

段階1〜3:土台を固める

シェーファーは経済的自由への道を7段階で整理しています。最初の3段階は「土台期」です。

  • 第1段階:財務的な認識——現在の収支・資産・負債を正確に把握する
  • 第2段階:財務的な理解——お金の基本ルール(複利・保険・税)を学ぶ
  • 第3段階:財務的な安定——生活費の3〜6ヶ月分の緊急資金を確保する

多くの経営者が「自分はもう経営者だから」と第1・2段階を飛ばして投資や節税に走ります。しかし、自分の財務状態を正確に把握できていない経営者が、複雑な金融商品を扱うのは危険です。土台なき投資は賭けです。

段階4〜5:仕組みを育てる

  • 第4段階:財務的な安心——パッシブインカムが基本生活費をカバーする状態
  • 第5段階:財務的な自立——働かずに現在の生活水準を維持できる資産規模に到達

第4段階は、経営者にとって「事業が止まっても食える状態」と言い換えられます。ここに到達すると、経営判断が劇的に変わります。恐怖から下した決断ではなく、余裕から生まれた選択ができるようになる。私が支援してきた経営者の中で、本当に強い判断力を持っていた方々は、例外なくこの段階に達していました。

段階6〜7:真の自由を設計する

  • 第6段階:財務的な自由——望む生活すべてをパッシブインカムで賄える
  • 第7段階:財務的な豊かさ——社会・次世代への還元ができる状態

最終段階は「使い切れないほどある」ではなく、「与えることができる」という状態です。シェーファーはここに精神的な豊かさの本質を見ています。経営者が「事業を通じて地域に貢献したい」という志を持つとき、それを持続可能にするのがこのステージだと私は解釈しています。

経営者・個人事業主が本書から得るべき3つの視点

視点①:「事業の利益」と「個人の資産形成」を分けて考える

中小企業の経営者が陥りやすい罠のひとつが、「会社の財布=自分の財布」という感覚です。法人化しているにもかかわらず、役員報酬の設計が曖昧で、個人としての資産形成がほぼゼロ——という方に、私は何度も出会ってきました。

本書の教えを経営に当てはめるなら、会社の利益を上げることと、自分個人の経済的自由を設計することは、別のプロジェクトとして並行して動かす必要があるということです。役員報酬の一定割合を自動的にNISAやiDeCoに回す仕組みを作るだけで、シェーファーの「Pay Yourself First」は実現できます。

視点②:補助金・融資は「資産を買う燃料」として使う

私の専門領域のひとつが補助金・資金繰り支援です。事業再構築補助金やものづくり補助金など、中小企業が活用できる公的支援は多岐にわたります。しかしこれらを「運転資金の穴埋め」に使っている経営者が少なくありません。

シェーファーの原則に照らせば、外部資金は「資産を購入するレバレッジ」として使ってこそ意味がある。設備投資・デジタル化・人材育成など、将来の収益を生む資産に転換することで、初めて経済的自由への歩みが加速します。補助金の申請戦略を考えるとき、私はいつもこの視点を経営者と共有するようにしています。

視点③:事業承継は「経済的自由の設計」そのもの

事業承継もまた、私が深く関わる専門領域です。後継者に事業を引き渡す際、多くの経営者は「会社を守ること」に集中しますが、同時に「自分がリタイア後も経済的に自立できるか」を設計することが不可欠です。

本書の第5〜6段階、つまり「働かずに生活できる状態」を、事業承継のゴール設定に組み込む——これが私が提唱するアプローチです。株式の評価・退職金の設計・個人資産の分離など、シェーファーのロードマップは承継後の人生設計にも強力な羅針盤になります。

この一冊があなたの「お金の地図」になる理由

📝 えだもんの現場視点

事業承継の支援をしていると、「会社は後継者に渡せるが、自分の老後が心配」という経営者に頻繁に出会います。退職金の設計だけでは足りず、株式評価・個人資産の切り分け・リタイア後のキャッシュフロー設計まで一体で考える必要があります。シェーファーのロードマップ第5〜6段階を承継の出口戦略に重ね合わせると、経営者の顔つきが変わる瞬間を何度も見てきました。

難解な金融理論ではなく、行動できる哲学

本書の最大の魅力は、抽象論に終わらない点です。シェーファー自身が20代で多額の借金を抱え、そこから富を築いた実体験をもとに書かれているため、言葉に現実の重みがあります。理論と行動が常にセットで語られ、「で、明日から何をすればいいのか」が明確です。

思考の軸が変わると、経営判断も変わる

私がこの本を経営者に勧める最大の理由は、「お金の哲学」が変わると経営判断の質が変わるからです。恐怖から動く経営と、余裕から動く経営では、従業員への影響・取引先との関係・中長期の事業設計、すべてに違いが出ます。

経済的自由は「贅沢な夢」ではなく、経営者として持つべき戦略的な目標です。本書はその目標を、具体的な地図と行程表として示してくれます。ぜひ一度、自分が今どの段階にいるかを確認しながら読んでみてください。きっと、明日からの一手が変わるはずです。

📖 この記事で紹介する書籍

『ファイナンシャル・フリーダム』(ボード・シェーファー)
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明日の一手

本書を読んで「なるほど」で終わらせないために、今日から動ける具体的な一手をお伝えします。小さな行動の積み重ねが、経済的自由への地図を現実のものにしていきます。

  1. 今日の銀行口座の残高と、毎月の固定支出・変動支出を紙1枚に書き出す。「財務的な認識(第1段階)」の出発点は、現状の数字を直視することから始まります。まず5分だけ、通帳と向き合ってみてください。
  2. 今週中に、役員報酬または事業収入の「10%を自動的に別口座へ移す仕組み」を銀行で設定する。金額の大小より「仕組みで動く」ことが大切。自動積立・自動振替を活用し、意志力に頼らない「Pay Yourself First」を今週中に稼働させましょう。
  3. 1ヶ月後を目標に、自分が「シェーファーの7段階のどこにいるか」を判定し、次の段階へ進むための数値目標(緊急資金の目標額・月積立額・パッシブインカムの第一歩)を1枚のシートにまとめる習慣をつくる。月次で数字を更新していくことで、経済的自由が「夢」から「計画」に変わります。

この記事のまとめ(Q&A)

『ファイナンシャル・フリーダム』が説く「ラットレース」とは?

ラットレースとは、どれだけ速く走っても回し車の外に出られないように、収入を得るために働き続け、働くために生きているような状態を指します。著者のボード・シェーファーは、これは怠慢が原因ではなく、お金の仕組みを知らずに走っていることから起きると指摘しています。売上が増えても経費や人件費が増え、手元に残るお金が変わらない状況も、この状態の一例です。まず「自分が働かなくてもお金が入ってくる仕組みがあるか」を問い直すことが出発点とされています。

経営者が経済的自由に近づくための富の4原則とは?

本書の富の4原則は、収入の一部を最初に自分へ支払うこと、複利の力を活かすこと、収入の流れを多様化すること、支出を管理しながら資産を買い続けることの4つです。収入の一部を自分へ支払う原則では、本書は最低10%を自動的に資産形成の口座へ移すことを勧めています。複利については、月5万円を年利8%で20年運用すると元本1,200万円が約2,900万円になるという例が示されています。収入源は事業収入だけに頼らず、不動産や配当など複数の流れを持つことが勧められています。

経済的自由を手に入れるための7段階とは?

7段階は、財務的な認識、理解、安定、安心、自立、自由、豊かさの順に進むロードマップです。最初の3段階は、現状の収支や資産の把握、お金の基本ルールの学習、生活費3〜6ヶ月分の緊急資金の確保にあたる土台づくりです。第4段階はパッシブインカムが基本生活費をまかなう状態で、第6段階では望む生活すべてをパッシブインカムで賄えるようになります。まずは自分が今どの段階にいるかを確認することから始めます。

この記事の根拠と執筆背景

執筆者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。

執筆・更新日

執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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