📖 この記事で紹介する書籍
『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』(長尾 一洋)
Amazonで見る →
「診断士の資格を取れば、副業で稼げる」——そう信じて試験勉強に励んだものの、いざ資格を手にしてみると、どこに営業すればいいのか、何を商品にすればいいのか、まったく見当がつかない。勉強会や協会活動には顔を出しているが、月に1〜2件の単発案件をこなすだけで、独立への道筋がいっこうに見えてこない。
そんな「合格後の迷子」状態に陥っている診断士は、決して少なくありません。私・えだもんも、九州を中心に100社以上の経営者を支援するなかで、こうした相談を何度も受けてきました。資格は持っている、熱意もある、でも「稼ぐ仕組み」がない——この一点で止まってしまうのです。
今回紹介する『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』(長尾一洋 著)は、その「仕組みをつくる」ための具体的なロードマップを示してくれる一冊です。タイトルのインパクトに驚くかもしれませんが、内容は派手なノウハウ集ではありません。得意分野を商品化し、顧問契約という安定した収益基盤へ育てていくための、地に足のついた段階設計が丁寧に解説されています。
この記事では、書籍のエッセンスを整理しながら、私自身の支援現場での体験と重ね合わせて解説します。副業診断士として収入を安定させ、やがて独立へとつなげていきたい方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
なぜ診断士は「稼げない資格」と言われてしまうのか
📝 えだもんの現場視点
100社以上の経営者を支援してきて気づくのは、「何でもできます」と言う診断士ほど選ばれにくいという現実です。私自身が補助金・資金繰り・事業承継に領域を絞ったことで、紹介が一気に増えました。専門性は「狭めるほど届く人に届く」。支援の入口が明確になれば、経営者はあなたに連絡する理由を見つけやすくなります。
資格=商品ではない、という現実
中小企業診断士は「経営コンサルタントの国家資格」ですが、医師や弁護士と違い、資格そのものが直接の収益につながるわけではありません。「診断士だから依頼が来る」という構造は存在せず、自分で商品をつくり、自分でクライアントを見つける力が求められます。
長尾氏はこの点を明確に指摘します。多くの診断士が「何でもできます」というスタンスで動いてしまうため、逆に「何者かわからない人」と認識されて選ばれない、という悪循環に陥ると。汎用的な知識は学習でいくらでも得られますが、それだけではクライアントの「この人に頼みたい」という意思決定には至らないのです。
単発案件に頼る収益モデルの限界
副業診断士が最初にたどり着くのは、セミナー登壇や補助金申請支援、スポット経営相談といった単発案件です。これらは収入の入口としては有効ですが、毎月ゼロから案件を取り続けなければならない消耗構造でもあります。
本書では、単発案件を「収入の種まき」と位置づけつつ、そこで終わらせないことを強調します。単発の接点を積み重ねながら、最終的に顧問契約という継続収益へと育てていく設計こそが、独立後の経営を安定させる鍵だと明示されています。
「得意分野の商品化」が独立の第一歩になる理由
専門性を「一言で言える」状態にする
長尾氏が本書で繰り返し強調するのは、専門領域を絞り込み、一言で説明できるポジションを確立することの重要性です。「補助金に強い診断士」「製造業の原価管理専門の診断士」「事業承継だけを支援する診断士」——こうした明確な専門性があって初めて、紹介が生まれ、指名が生まれます。
私自身、補助金・資金繰り・法人化・事業承継という4つの領域に絞って支援を行っています。最初から全方位に展開しようとするより、「この分野ならえだもん」と思ってもらえる領域を先につくるほうが、紹介の連鎖が起きやすいと実感しています。本書の主張は、私の現場感覚とも完全に一致します。
商品設計の3層構造を理解する
本書では、商品設計を以下の3層で考えることを提唱しています。
- 入口商品(低単価・短期):セミナー、無料相談、補助金申請支援など。信頼を獲得するための接点づくり。
- 中間商品(中単価・プロジェクト型):経営改善計画策定、事業計画書作成など。専門性を実証する場。
- 本命商品(月額継続・顧問契約):月次訪問、経営会議への参加、経営者の意思決定サポートなど。
この3層を意識して設計することで、クライアントが自然に上位の商品へと移行していく動線を整備できます。多くの副業診断士が入口商品だけで止まってしまうのは、中間・本命商品の設計を先送りにしているからです。
「解決できる課題」から逆算して商品をつくる
長尾氏は「商品をつくってから売る」ではなく、「クライアントが抱える課題から逆算して商品を設計する」というアプローチを推奨しています。たとえば、資金繰りに悩む経営者が多いなら、「月次キャッシュフロー管理の仕組み化支援」という具体的な商品として設計する。課題解決の出口が明確なほど、クライアントは「依頼する理由」を見つけやすくなります。
副業から顧問契約へ——段階設計の全体像
📝 えだもんの現場視点
建設業の社長から「えだもんは毎月来てくれるから安心して経営できる」と言っていただいたことがあります。その方との接点は最初、補助金申請の単発支援でした。数字を一緒に見続ける習慣をつくったことで、自然に顧問契約へ移行できました。本書が言う「信頼を積み重ねてから本命商品を提案する」流れは、私の実体験そのものです。
フェーズ1:信頼の種まき期(副業開始〜6ヶ月)
最初の半年は、収益よりも実績と信頼の積み上げを優先します。本書では、この時期に無理に高単価を狙わず、「この人は本当に課題を解決してくれる」という体験を複数のクライアントに提供することを勧めています。補助金申請のサポートや、無料・低価格での経営相談がこのフェーズでは有効です。
重要なのは、案件の質と記録です。どんな課題に、どんなアプローチで、どんな結果を出したか。このドキュメントがのちの提案書や自己紹介の武器になります。
フェーズ2:商品の実証期(6ヶ月〜1年半)
信頼を得た企業に対して、プロジェクト型の中間商品を提案します。「経営改善計画を3ヶ月かけて一緒につくりましょう」「資金繰り表の整備と月次モニタリングを半年やりましょう」といったかたちです。ここで継続的に関わることの価値をクライアントに体感してもらうことが目的です。
長尾氏はこのフェーズを「本命への橋渡し」と表現しています。単発の成果物を納品して終わりにするのではなく、「続けて支援したほうが成果が出る」という状態をつくることが鍵です。
フェーズ3:顧問契約への昇華(1年半〜独立)
プロジェクト型の支援を経て、クライアントが「この人にずっといてほしい」と感じるようになれば、月額顧問契約への移行提案が自然に受け入れられます。本書では、月額5〜15万円の顧問契約を5〜10社獲得することで、独立後の安定収益基盤が完成すると試算しています。
月額10万円×10社で月収100万円、年収1,200万円。これが「年収1億」への入口ラインであり、タイトルにある”1億”はその先の事業拡大(人を雇用し、仕組みを組織化する段階)を指しています。まずはこの月収100万円ラインの達成が、副業から独立への現実的なマイルストーンです。
顧問契約を維持・拡大するための「伴走力」の磨き方
経営者に「答え」ではなく「問い」を届ける
長尾氏が本書で強調するのは、コンサルタントとしての役割は「正解を教える人」ではなく「経営者が自分で考えられる環境をつくる人」だということです。アドバイスを一方的に与えるより、「なぜそう思うのですか?」「それが実現できたら何が変わりますか?」と問いを重ねる伴走スタイルのほうが、長期的な信頼関係につながります。
私が「伴走型CFO」として支援している理由も、まさにここにあります。経営者は答えを求めている場面と、一緒に考えてほしい場面が混在しています。その温度感を読み取りながら関わり続けることが、解約されない顧問の条件です。
数字で語れる支援が顧問の価値を可視化する
顧問契約が継続されるかどうかは、最終的に「成果の見える化」にかかっています。本書では、月次の面談で必ず数値の変化を一緒に確認する習慣をつくることを推奨しています。売上・粗利・資金残高・受注件数——どの指標が動いたか、なぜ動いたかを言語化することで、「顧問料を払う価値」をクライアント自身が実感できるようになります。
私の支援現場でも、月次の資金繰り表レビューと損益の変化確認は欠かしません。「先月より〇〇万円キャッシュが厚くなりましたね」という一言が、信頼を積み重ねる最強のコミュニケーションです。
この本が「副業診断士」だけでなく「経営者」にも刺さる理由
📝 えだもんの現場視点
副業診断士からの相談で最も多いのが「いくらで提案すればいいかわからない」という値付けの悩みです。これは価格の問題ではなく、商品の定義が曖昧なまま動いているサインです。「何を、何ヶ月で、どんな状態にするか」が言語化できていれば、価格は自然に決まります。本書の商品設計の章は、この悩みへの直接的な処方箋になっています。
「売れる仕組み」の設計思想は業種を超える
本書のタイトルは診断士向けですが、内容の核心にある「専門性の絞り込み→商品設計→継続収益モデルの構築」というフレームワークは、士業・コンサルタントに限らず、あらゆる個人事業主・スモールビジネス経営者に応用できます。
「何でも屋」から「専門家」へのシフト、単発売り切りから継続課金モデルへの移行——この設計思想は、美容師が店を持つとき、フリーランスエンジニアが顧問契約を取るとき、整体師が会員制サロンをつくるとき、すべてに共通します。経営者が読んでも、自社の商品・サービス設計を見直すヒントが豊富に詰まっています。
「年収1億」という言葉の本当の意味
最後に、このタイトルについて触れておきます。「年収1億」というワードは過激に見えますが、長尾氏の意図は「上限思考の解放」にあります。多くの診断士が「副業で月10万円稼げればいい」と天井を低く設定してしまうことへの問いかけです。
顧問契約を積み上げ、スタッフを採用し、チームで支援を届ける仕組みをつくれば、個人の時間的限界を超えた収益が実現できる。その可能性を信じて設計することが、まず必要だということです。大きな目標が、日々の行動の質を変えます。私自身、「伴走型CFOとして九州の中小企業を変える」という目標を掲げることで、日々の支援への向き合い方が変わった実感があります。
資格を「持っているだけ」から「稼ぐ道具」へ変える。その第一歩を、この一冊は丁寧に示してくれます。副業診断士として迷っている方、そして自分のサービスビジネスを次のステージへ引き上げたい経営者に、強くお勧めしたい一冊です。
明日の一手
まずは「一言で言える専門性」を書き出すことから始めましょう。頭の中にあるものを言語化するだけで、あなたの商品設計は大きく前進します。
- 自分の「得意分野」を3つ書き出し、そのなかで最も「解決した課題の実績が多いもの」を1つに絞ってみる。それを「〇〇に困っている△△業の経営者を支援する診断士」という形式で一文にまとめる。
- 過去に支援した(または相談に乗った)案件を3〜5件振り返り、「どんな課題→どんな支援→どんな結果」の形でA4一枚にまとめる。これが最初の実績シートになり、提案書の核になる。
- 月1回、支援中のクライアント(または身近な経営者)と数字を一緒に確認する30分の定例ミーティングを習慣化する。売上・資金残高・粗利のいずれか1指標を毎月追いかけることで、「継続支援の価値」を双方が実感できる関係をつくる。
この記事のまとめ(Q&A)
中小企業診断士が副業で稼げない理由とは?
診断士資格は「何でもできる」ことを証明するものですが、それだけではクライアントに「この人に頼む理由」が伝わりません。『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』では、専門領域を絞り込んで一言で説明できるポジションを確立することが収益化の第一歩だと説いています。汎用的な知識より、特定課題への解決実績が選ばれる理由になります。
副業診断士が顧問契約を取るにはどうすればいい?
入口商品(補助金支援・スポット相談)でまず信頼を築き、プロジェクト型の中間商品で継続関与の価値を体感してもらい、その流れで月額顧問契約を提案する3段階の設計が有効です。本書ではこの段階設計を「フェーズ1〜3」として整理しており、焦らず信頼を積み上げることが長期契約につながると解説しています。単発案件だけで終わらせない動線設計が鍵です。
診断士として独立するための収益の目安はどのくらい?
月額5〜15万円の顧問契約を5〜10社確保することで、月収50〜150万円の安定基盤がつくれます。『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』では、まず月収100万円ラインの達成を独立の現実的なマイルストーンとして示しています。顧問契約は継続収益であるため、単発案件を積み上げるよりも収益の安定性が高く、独立後のリスクを大幅に下げられます。
この記事の根拠と執筆背景
執筆者について
枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。
執筆・更新日
執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

コメント