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『多動力』(堀江貴文)
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「このまま今の仕事だけ続けていて、10年後は大丈夫なのだろうか——」
そんな不安が、夜ふと頭をよぎることはないだろうか。
業界の変化が速い。AIが仕事を奪いはじめている。取引先が減っている。売上の柱が1本しかない。中小企業経営者や個人事業主なら、こうした危機感は珍しくない。副業・複業を始めたいと思いながらも、「今の仕事だけで手一杯」「何から手をつければいいかわからない」と踏み出せずにいる人も多い。
そんなあなたに、今日紹介したいのが堀江貴文氏の著書『多動力』だ。
この本は、単なる「副業のすすめ」ではない。「スキルの掛け算」によって、誰にも真似できない唯一無二の存在になる方法を、堀江流の歯切れのよい言葉で教えてくれる一冊だ。私自身、中小企業診断士として100社以上の経営者に伴走する中で、この本の考え方に何度も助けられてきた。
「一つのことを極める」時代はもう終わった
📝 えだもんの現場視点
支援先の建設業の社長が「売上の9割が元請け1社への依存で、急に単価を下げられたら終わりだとわかっている。でも動けない」と打ち明けてくれたことがある。『多動力』を渡したのがきっかけで、その社長はSNSで施工事例を発信し始め、半年後には個人客からの直接依頼が入り始めた。「掛け算の素材」はすでに手元にあった。動くかどうかだけが問題だった。
「レア人材」の定義が変わった
かつてのビジネス社会では、「一つの職人技を極めた人間が最強だ」という常識があった。しかし堀江氏はこの常識を真っ向から否定する。
本書の中で堀江氏が示す「レア人材」の公式はシンプルだ。「一つの業界で100人に1人の人材」を3つ掛け合わせれば、100万人に1人の存在になれる、というロジックだ。
たとえば、「財務に強い(100人に1人)×IT活用ができる(100人に1人)×九州の中小企業ネットワークを持つ(100人に1人)」とすれば、その組み合わせを持つ人間はほとんどいない。1つの領域で日本一になることは誰にとっても現実的ではないが、3つの分野で上位1%に入ることなら、努力次第で誰でも到達できる範囲にある。
「専門バカ」では生き残れない理由
堀江氏は、一つの専門領域しか持たない「専門バカ」の脆弱性を指摘する。市場が変化したとき、その専門性が丸ごと不要になるリスクがあるからだ。
これは中小企業経営者にとっても他人事ではない。「うちは〇〇一本でやってきた」という会社が、業界の地殻変動で一夜にして苦境に立たされる場面を、私は何度も目の当たりにしてきた。専門性は武器だが、1本の武器だけに依存することは、経営リスクでもあるのだ。
「多動力」とは何か——じっとしていることが最大のリスク
「飽きる」ことは才能である
本書のタイトルにもなっている「多動力」とは、堀江氏によれば「いくつもの異なることを同時にこなす力」と定義されている。そしてその前提となるのが、「すぐに飽きる力」だ。
一見するとネガティブに聞こえる「飽き性」を、堀江氏はポジティブに再定義する。飽きるということは、すでにそのレベルをマスターしたというサインであり、次のステージに進む本能だという。好奇心のままに動き続けることが、複数の専門性を蓄積していく最速ルートだと説く。
「自分は飽き性だから何も続かない」と自己嫌悪に陥っていた人は、この視点の転換だけで肩の荷が下りる感覚を覚えるはずだ。
「恥をかく速度」を上げよ
堀江氏が本書で繰り返し強調するのが、「完璧主義を捨て、まずやってみる」という姿勢だ。「準備ができてから始める」ではなく、「始めながら準備する」というスタンスだ。
副業を始めたいが踏み出せない人の多くは、「もう少し勉強してから」「もう少し貯金ができてから」「もう少し時間ができてから」と先送りを繰り返している。だが堀江氏に言わせれば、「始める前の準備時間」はすべてロスである。恥をかく速度を上げること、つまり未熟なままでもとにかく動き出すことが、唯一の正解だという。
スキルの掛け算——実践的な「組み合わせ方」の設計
自分の「3本の矢」を書き出す
堀江流の複業設計を実践するには、まず自分が現時点で持っているスキル・経験・ネットワークを棚卸しするところから始まる。本書では「3つの肩書きを持て」という表現でこれを説明している。
ここで重要なのは、「まったく関係のないジャンル」を組み合わせることに価値があるという点だ。似た者同士を掛け合わせても希少性は生まれにくい。たとえば、「建設業×SNSマーケティング×女性採用」という組み合わせは、一見バラバラに見えて、現代の建設業が抱える課題に対し強力な解決策を提供できる。
「ひとつの仕事」から「複数の仕事」へのシフト方法
本書には、複業を始めるための具体的な心得も散りばめられている。堀江氏がとくに強調するのは以下の3点だ。
- 自分の仕事を「コンテンツ化」する習慣を持つ……日々の業務の中にある知見を、ブログ・SNS・動画として外に出していく。これ自体が新たな仕事の入り口になる。
- 「時間の使い方」を根本から見直す……ダラダラ続く会議、無意味な報告書作成、移動時間のロス——これらを徹底的に排除して、新しいことに投資する時間を捻出する。
- 「嫌いなことはやらない」と決める……エネルギーを消耗する仕事から撤退し、得意なこと・好きなことに全集中することが複業成功の条件だという。
えだもんの現場から——「多動力」が経営者を救う瞬間
📝 えだもんの現場視点
100社以上の経営者を見てきて確信していることがある。複業や新事業で成功している経営者に共通するのは、「完璧な準備が整ってから動いた」ケースがほぼ皆無だという点だ。みな最初は未完成のまま動き出し、現場で磨いている。堀江氏が言う「恥をかく速度を上げる」は、まさにこの現象を言い当てている。準備を重ねるほど、行動は遠のく。
100社を見てきてわかった「一本足打法」の危うさ
私がこの本を経営者に強く勧める理由は、現場で繰り返し目撃してきた「一本足打法の危機」にある。補助金申請の伴走支援をしていると、「売上の8割が1社依存」「利益の柱が1つの事業だけ」という会社に頻繁に出会う。その状況が崩れたとき、経営は一気に危機を迎える。
堀江氏の「スキルの掛け算」という考え方は、個人のキャリアだけでなく、事業ポートフォリオの設計そのものにも応用できる。「うちの強みAと、新たに学んだBを掛け合わせると、どんな新事業が生まれるか」という問いかけを、経営者自身が持てるかどうかが、次の10年を分ける。
📝 えだもんの現場視点①
「CFO×診断士×メディア運営」——私自身の掛け算実験
実は私自身も、この「スキルの掛け算」を意識してキャリアを設計してきた一人だ。中小企業診断士の資格、伴走型CFOとしての財務支援の実務、そして「本で解く」という選書メディアの運営——これら3つは一見バラバラに見えるかもしれない。
しかし実際には、「経営の現場で実証された知識を、書籍という形で体系化し、経営者の意思決定に役立てる」という一本の軸でつながっている。掛け算の結果として生まれるのは、「経営×読書×発信」という、同じ組み合わせを持つ競合がほとんどいない領域だ。
📝 えだもんの現場視点②
この本の「落とし穴」——多動力の誤解に注意せよ
「飽き性の免罪符」にしてはいけない
『多動力』を読んで感化され、次々と新しいことに手を出すだけでは意味がない。堀江氏が言っているのは「何でも浅く広く手を出せ」ではなく、「深く潜った経験を複数持て」ということだ。
「多動力」の本質は、深さのある専門性を複数持ち、それを掛け合わせることにある。1つひとつの経験を一定レベルまで深めることなしに、ただ「飽きた」と言って逃げていくのは、単なる無責任だ。この点を誤解すると、何一つ身につかないまま時間だけが過ぎていく。
「収益化」の設計を忘れずに
複業や多動の考え方を実践する際に、経営者として絶対に忘れてはいけないのが「それがいつ、どのように収益につながるか」という設計だ。
私が伴走支援の中で見てきたケースでは、複業や新規事業に乗り出したものの、既存事業の収益を食いつぶしてしまうパターンが少なくない。多動力を活かすためにも、資金繰りの見通しと事業収益の設計は並行して行う必要がある。情熱と数字は、両輪でなければならない。
📝 えだもんの現場視点③
まとめ——「多動力」があなたの10年後を変える
📝 えだもんの現場視点
複業や新規事業の相談を受けるとき、私が必ず確認するのが「既存事業の資金繰りに3〜6ヶ月の余裕があるか」という点だ。多動力を発揮するにも、生活と事業の土台が安定していなければ、焦りから判断を誤る。情熱を持って動き出すことと、数字の裏付けを持つこと——この両方が揃ったとき、複業は初めて「リスク」から「投資」に変わる。
この本が刺さる人・刺さらない人
正直に言えば、『多動力』は万人向けではない。堀江氏の文体は挑発的で、「常識」や「安定」を求める人には息苦しく感じられるかもしれない。「そんな無茶な話、俺には関係ない」と本を閉じてしまう人もいるだろう。
しかし、「このままでは変われない」「何かを変えなければという焦りがある」と感じている経営者や個人事業主にとって、この本は強力な起爆剤になる。堀江氏の過激な言葉の奥には、「変わりたいなら、まず動け」という至ってシンプルなメッセージが貫かれている。
「唯一無二」になるための第一歩
1つの仕事しか持たない不安、副業に踏み出せない迷い——その根本にあるのは「自分に何ができるかわからない」という自己認識の曖昧さだ。
『多動力』は、その霧を晴らすための一冊だ。自分が今まで経験してきたこと、学んできたこと、知っていること——それらはすでに「掛け算の素材」として手元にある。あとはそれを組み合わせる視点と、踏み出す勇気だけだ。
読み終えた後、あなたはきっと「自分にも掛け算できる素材がある」と気づくはずだ。
✅ 明日の一手——今日から動き出すための3ステップ
明日の一手
本を読んで「面白かった」で終わらせてはもったいない。今日から3つのステップで、あなたの「掛け算」を動かし始めよう。
- 【今日できること】紙1枚に「自分が持っているスキル・経験・ネットワーク」を10個書き出す。「仕事に直結するもの」だけでなく、趣味・地域・人脈など何でもよい。「掛け算の素材リスト」を作ることが出発点だ。
- 【今週中に試すこと】リストの中から「組み合わせると面白そうな2〜3個」を選び、「この掛け算で誰の何を解決できるか」を1行で書いてみる。完璧でなくてよい。言語化するだけで、自分の輪郭が見えてくる。
- 【1ヶ月後を目標に】自分の掛け算テーマで、SNS・ブログ・知人へのメールなど、どんな小さな発信でもいいので「外に出す」を4回以上実践する。発信は、自分の専門性を磨く最速の手段であり、複業の入り口になる。
この記事の根拠と執筆背景
執筆者について
枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。
執筆・更新日
執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

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