「経営者として何を学べばいいかわからない」——『経営者になるためのノート』に学ぶ柳井正直伝の思考法を身につける方法

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『経営者になるためのノート』(柳井正)
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「経営者として、いったい何を学べばいいのだろう」

起業した直後、あるいは事業を引き継いだばかりのとき、多くの経営者がこの問いに立ち止まります。ビジネス書を手当たり次第に読んでみても、どれも断片的で、自分の会社にどう活かせばいいかピンとこない。セミナーに参加しても、刺激はあるのに翌週には元の日常に戻ってしまう。

私自身、14年間で2,000冊超のビジネス書を読み続けてきた中で、何度もそんな壁にぶつかりました。そして、100社以上の経営者に伴走支援をしてきた今も、同じ悩みを抱えるリーダーたちに毎月出会い続けています。

そんな「学び方の迷子」に対して、日本屈指の経営者が直接答えを渡してくれる一冊があります。ユニクロを世界ブランドへと育て上げたファーストリテイリング代表・柳井正による『経営者になるためのノート』です。

この本はただの経営論ではありません。柳井氏がユニクロの幹部育成のために実際に使っていた「内部テキスト」をベースにした、実践的な思考訓練の書です。読んで終わりではなく、書き込みながら使う設計になっており、経営者の頭の中を自分ごととして体験できる構造になっています。

なぜ「経営者思考」は学校でも本でも教われないのか

📝 えだもんの現場視点

支援先の建設業の社長が「売上は伸びているのに、なぜか会社が前に進んでいる気がしない」と相談してきたことがあります。話を聞くと、ビジョンが言語化されておらず、目先の仕事を取り続けるだけの状態でした。『経営者になるためのノート』の「夢を描くワーク」を一緒にやってみたところ、「10年後に地域No.1のリフォーム会社になる」という言葉が初めて出てきました。言語化するだけで、次の採用・設備投資の判断基準が一気に明確になったのが印象的でした。

知識ではなく「判断力」が問われる世界

柳井氏は本書の冒頭でこう断言します。「経営者は孤独だ。正解のない問いを、自分一人で決め続けなければならない」と。

学校教育は「正解を探す力」を育てます。しかし経営の現場では、正解がそもそも存在しないことが当たり前です。資金をどこに投じるか、人をいつ採用するか、事業をいつ撤退するか——これらはすべて「不確かな情報の中で下す判断」であり、知識を覚えるだけでは絶対に身につきません。

だからこそ柳井氏は、知識の伝達ではなく「思考の型を鍛えること」にこの本を捧げています。

ビジネス書が「役に立たない」と感じる本当の理由

多くのビジネス書は「何をすべきか(What)」を教えてくれます。しかし『経営者になるためのノート』が教えてくれるのは「どう考えるか(How to Think)」です。

この違いは決定的です。Whatだけ知っていても、自社の状況に応用できなければ意味がありません。一方、思考の型さえ身につければ、どんな状況でも自力で答えを導き出せる。柳井氏はこの差を「サラリーマン思考と経営者思考の分岐点」と呼んでいます。

本書が定義する「経営者に必要な4つの力」

①夢・ビジョンを描く力

柳井氏は、経営者の仕事の出発点は「夢を描くこと」だと言い切ります。ここでの「夢」は精神論ではありません。「自分の会社が10年後にどうあるべきか」「顧客にどんな価値を提供しているか」という具体的な未来像のことです。

本書では、夢を描くためのフレームワークが用意されており、読者自身がノートに書き込む形式で思考を深めていきます。「自分のビジョンを言語化する」という作業を通じて、経営判断のブレを減らす土台を作るのです。

②戦略を立てる力

ビジョンを描いたあとに必要なのが戦略です。柳井氏は戦略を「資源の集中と捨てることの決断」と定義しています。すべてに手を出す経営は、結果的にすべてが中途半端になる。何を捨てるかが、何を伸ばすかよりも重要だというメッセージは、中小企業経営者にこそ刺さる言葉です。

本書には「競合と自社の強みを比較するマトリクス」や「捨てる判断基準のリスト」が含まれており、自社の戦略を可視化するワークが随所に盛り込まれています。

③チームを動かす力

「優秀な個人よりも、機能するチームの方が強い」——柳井氏がユニクロを大企業へと育てた根本思想がここにあります。経営者は自分で動くのではなく、チームを通じて成果を出す存在でなければならない。

本書では「人を動かすための言語化」に多くのページが割かれています。理念をどう伝えるか、評価をどう設計するか、問題社員にどう向き合うか。こうした実践的なテーマが、ワーク形式で展開されます。

④数字を読み・動かす力

柳井氏は数字を「経営の言語」と表現します。P/L(損益計算書)もB/S(貸借対照表)も、ただの会計書類ではなく「会社の健康状態を映す鏡」です。数字を読む力のない経営者は、会社の異変に気づくのが遅れる。

本書では財務の細かい計算式を教えるのではなく、「数字のどこを見れば経営判断に使えるか」という視点を鍛える構成になっています。

「ノート形式」が生む圧倒的な学習効果

読むだけでは経営者思考は身につかない

この本の最大の特徴は、余白に自分の考えを書き込む設計になっていることです。「あなたの会社の強みを3つ書いてください」「今期の最大の課題は何ですか?」——こうした問いが本文中に散りばめられており、読者は受動的に読むのではなく、能動的に自分の経営と向き合わざるを得ません。

人間の脳は「インプットだけ」ではなく「アウトプットとセット」のときに最も深く学習します。柳井氏がこの形式を選んだのは、経験則からくる深い洞察があると私は感じています。

幹部育成ツールとしての使い方

本書はもともとユニクロ社内の幹部育成テキストとして使われていたものです。つまり、一人で読む本としてだけでなく、チームで一緒に読み、議論するための素材としても機能します。

私が支援してきた経営者の中には、幹部社員3〜4人とこの本を輪読し、各章のワークに全員で取り組んだことで「自社の方向性についての認識のズレ」を発見できた、という事例があります。本書は組織開発のツールとしても優秀なのです。

えだもんが現場で見た「経営者思考の欠如」がもたらすリスク

📝 えだもんの現場視点

100社以上の経営者を見てきて気づいたのは、「経営が苦しい会社」の多くは社長が現場から抜け出せていないという共通点があることです。売上1億円の壁、3億円の壁——これらは事業の問題ではなく、経営者自身が「プレイヤー」から「マネージャー」へと思考を切り替えられていないことが原因のケースがほとんどです。柳井氏が本書で定義する「経営者とは何か」という問いは、この壁を突破するための根本的な問いかけだと、現場で何度も確認してきました。

「作業者としての社長」に陥るパターン

100社以上の経営者に伴走してきた中で、最も多く目にする問題が「社長が現場から抜け出せない状態」です。売上は上がっているのに、利益が残らない。人を採用しても定着しない。これらの多くは、経営者が「プレイヤー思考」から「経営者思考」に切り替えられていないことが根本原因です。

柳井氏が本書で定義する「経営者」とは、自分の手を動かすのではなく「チームと戦略と数字」を通じて価値を生み出す存在です。この定義だけでも、多くの中小企業経営者にとって目から鱗ではないでしょうか。

ビジョンがないと「補助金依存」になる

私が専門としている補助金支援の現場でも、本書の重要性を痛感することがあります。補助金申請書には必ず「事業の将来像」を書く欄がありますが、ビジョンが言語化できていない経営者は、そこで詰まってしまいます。

補助金はあくまでも「ビジョン実現のための手段」です。手段を先に求める経営は、補助金が取れても事業が前に進みません。柳井氏の言う「夢を描く力」は、補助金活用の文脈でも不可欠な基盤なのです。

中小企業経営者が本書から得るべき3つの実践ポイント

①毎朝10分、「今日の経営判断」を書き出す習慣

本書の「ノート形式」にならい、毎朝10分だけ手帳やノートに「今日下す可能性のある判断」を書き出してみてください。これは経営者思考を鍛える最もシンプルな訓練です。

判断を書き出すことで、「なんとなく決める」から「根拠を持って決める」へと意思決定の質が変わります。柳井氏が本書で繰り返すテーマである「判断の言語化」の第一歩です。

②「捨てるリスト」を月に1度作る

戦略の核心は「何を捨てるか」にあります。月に一度、「今月やめることを決める会議」を自分一人でも行ってみてください。事業、業務、顧客、慣習——何かを捨てることへの抵抗感が経営者を身動き取れなくさせます。

本書のワークを参考に、「やめることで何が生まれるか」を数字で考える習慣は、中小企業のリソース最適化に直結します。

③幹部社員と「輪読会」を月1回開催する

本書を一人で読むだけにとどめず、ナンバー2や主要幹部と一緒に読む機会を作ることを強くお勧めします。一章ずつ読んでワークの答えを共有するだけで、「社長が頭の中で描いているビジョン」と「幹部が理解しているビジョン」のギャップが可視化されます。

このギャップの発見こそが、組織のコミュニケーション問題の解決につながります。読書が「経営改善ツール」として機能する、最も費用対効果の高い施策の一つです。

まとめ——「経営者の思考」は意図的に鍛えるしかない

📝 えだもんの現場視点

補助金申請の支援をしていると、事業計画書の「将来ビジョン」欄で詰まる経営者が非常に多いことに気づきます。「補助金さえ取れれば何とかなる」という発想では、審査官にも事業の本気度は伝わりません。ある飲食業の社長に『経営者になるためのノート』のビジョンワークを先にやってもらったところ、補助金申請書の記載内容が劇的に変わり、採択率も上がりました。手段の前に目的を明確にする——この順番が、補助金活用でも経営全般でも成否を分けます。

『経営者になるためのノート』が伝える最大のメッセージは、「経営者思考は生まれつきの才能ではなく、意図的な訓練によって身につくスキルだ」ということです。

柳井氏はユニクロを一代でグローバルブランドへ育てた人物ですが、本書を読む限り、その成功は「天才的なひらめき」ではなく「徹底した思考の習慣化」によるものだとわかります。夢を描き、戦略を立て、チームを動かし、数字で確認する——この4つのサイクルを日々繰り返すことが、経営者の仕事の本質です。

14年間、2,000冊超のビジネス書を読んできた私が断言します。「何を学べばいいかわからない」経営者にとって、この本は学習の出発点として最適な一冊です。巻末のワーク欄が埋まるころには、あなたの経営の輪郭は確実に鮮明になっているはずです。

読んで終わりにしない。書いて、考えて、動く。それがこの本の正しい使い方であり、経営者思考を手に入れる唯一の道です。

明日の一手

本を読んで「いい話だった」で終わらせないために、今日から動ける3つのアクションをお渡しします。柳井氏のノート形式にならい、まずは書くことから始めましょう。

  1. 手帳やノートに「自社が10年後に実現したいこと」を3行だけ書いてみる。うまく書けなくてもOK。「書けなかった」という事実が、今のビジョンの曖昧さを教えてくれる最初のフィードバックになります。
  2. 本書を購入し、第1章のワーク欄に実際に書き込んでみる。読むだけでなく「書く」ことで、経営者思考の訓練は始まります。できれば幹部社員一人に「一緒に読もう」と声をかけてみてください。
  3. 月に1回、「今月やめることを決める30分」をカレンダーに入れる。やめる候補を3つ書き出し、そのうち1つを実際に手放す決断をする習慣を1ヶ月続けてみてください。戦略の本質である「集中と捨てる決断」が、日常の経営判断の質を変えていきます。

この記事の根拠と執筆背景

執筆者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。

執筆・更新日

執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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