いつも疲れていて集中力が続かない経営者へ——『最高の体調』に学ぶ科学的コンディション管理を手に入れる

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『最高の体調 進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法』(鈴木祐)
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午後2時を過ぎると、頭が重くなる。大事な商談の前なのに、なんとなくぼんやりする。夜は疲れているはずなのに眠れない。翌朝また疲労感を抱えたまま、今日も全力で走らなければならない——。

経営者・個人事業主のあなたに、こんな経験はないだろうか。「体調管理も仕事のうち」とわかっていながら、具体的に何をすればいいのか、どこから手をつけるべきなのか、ずっと後回しにしていないか。

私(えだもん)は中小企業診断士として100社以上の経営者に伴走してきたが、「体調管理がうまくいっていない経営者は、意思決定の質も下がっている」と肌で感じてきた。体は最大の経営資源だ。今回紹介する『最高の体調』は、その確信をデータとエビデンスで裏付けてくれる一冊だった。

なぜ現代人はいつも疲れているのか——「文明病」という視点

📝 えだもんの現場視点

支援先の建設業の社長が「最近、判断が遅くなった気がする」とこぼしていたことがある。話を聞くと、睡眠は5〜6時間、昼食はコンビニのパンと缶コーヒーが定番だった。試しに睡眠を7時間に延ばし、昼に味噌汁を加えるだけを3週間実践してもらったところ、「頭が軽くなって、会議で先を読む余裕が出てきた」と報告があった。体は正直だと改めて思った。

人類の体は「狩猟採集時代」のままアップデートされていない

本書の冒頭で著者・鈴木祐氏が提示する視点は、シンプルかつ強烈だ。「私たちの体は、数万年前の環境に最適化されたまま、現代という異物の中で生きている」というものだ。

進化の観点から見ると、人類の遺伝子がアップデートされるには数万年単位の時間が必要だ。ところが、私たちを取り巻く環境は過去100年で劇的に変化した。高カロリーな加工食品、人工照明による昼夜逆転、デジタルデバイスからの絶え間ない刺激、慢性的な運動不足——。これらはすべて、人体にとって「想定外の環境」だ。

その結果として生じるのが、著者が「文明病」と呼ぶ慢性的なコンディション不良である。疲労、集中力の低下、不眠、慢性的なストレス反応——これらは「意志が弱い」のでも「根性が足りない」のでもなく、体が環境のミスマッチに悲鳴を上げているサインだ、と本書は明確に述べている。

「疲れ」は自己責任論では解決しない

経営者はとかく「気合でなんとかする」という思考に陥りやすい。しかしそれは、エンジンオイルが切れた車にアクセルを踏み続けるようなものだ。本書が示すのは、まず環境と習慣を整え、体の自然な機能を引き出すという逆転の発想だ。

この視点を持てるかどうかが、本書を読む最初の関門であり、最大の収穫でもある。

食事——「何を食べるか」より「何を食べないか」が鍵

超加工食品が脳と腸を狂わせる

本書が食事について提示する結論は明快だ。「現代のコンディション低下の最大原因の一つは、超加工食品の過剰摂取にある」というものだ。

コンビニのパン、市販の菓子、清涼飲料水、ファストフード——これらに共通するのは、人類が進化の過程で一度も接触したことのない化学物質や糖質・脂質の組み合わせだ。腸内環境を乱し、炎症を引き起こし、結果として脳の働きにも悪影響を及ぼすことが複数の研究で示されている。

腸内細菌と「第二の脳」の関係

本書が特に力を入れて解説しているのが、腸と脳の双方向のつながり(腸脳相関)だ。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、セロトニンの約90%が腸内で生成されている。腸内環境が乱れると、気分の落ち込みや不安感、集中力の低下につながることがわかっている。

逆に言えば、腸内環境を整えることは、メンタルとパフォーマンスの改善に直結する。具体的には、発酵食品(納豆・味噌・ヨーグルト)や食物繊維(野菜・豆類・海藻)を意識的に取り入れることが推奨されている。難しい食事制限よりも、「腸が喜ぶものを増やす」という足し算の発想が実践しやすい。

運動——「やる気」を生み出す最強のツール

運動は「体を鍛えるもの」ではなく「脳を動かすもの」

本書が運動について述べる最も重要なポイントは、運動が脳に与える直接的な効果だ。有酸素運動を行うと、BDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌され、記憶力・学習能力・集中力が高まることが複数の研究で確認されている。

「運動する時間がない」という経営者は多い。しかし、本書が推奨する最低ラインは驚くほど低い。週150分の中強度の有酸素運動(早歩き程度でよい)——1日あたりに換算すれば約20分だ。この習慣を始めるだけで、仕事中の集中力・意欲・問題解決能力が有意に向上するという研究結果が紹介されている。

「座りっぱなし」が引き起こす見えないリスク

一方で、本書は「運動しているからといって、長時間の座位が免除されるわけではない」と警告している。長時間の座りっぱなしは、それ自体が独立したリスク要因であり、代謝低下・集中力の散漫・慢性的な疲労の蓄積につながる。

対策は単純だ。30〜60分に一度、席を立って2〜3分歩く。これだけで、血流と認知機能が改善されることが示されている。デスクワーク中心の経営者には、今すぐ取り入れられる最安コストの投資だ。

睡眠——すべてのパフォーマンスを支える「土台」

📝 えだもんの現場視点

100社以上を見てきて気づいたのは、「体調管理を後回しにする経営者ほど、緊急対応に追われている」という皮肉なパターンだ。疲労した脳は先読みが苦手になり、問題が大きくなってから気づく。コンディションが整っている経営者は、小さなサインを早期にキャッチし、先手を打てる。体調管理は守りではなく、経営の「攻め」の基盤だとつくづく感じている。

睡眠不足は「二日酔い状態」で仕事しているのと同じ

本書の睡眠に関する記述の中で、私が最も経営者に伝えたいのはこの事実だ。6時間睡眠を2週間続けると、2日間完全に徹夜したのと同程度のパフォーマンス低下が起きる——しかも本人はそれを自覚しにくい、というものだ。

「自分は短時間睡眠でも大丈夫」と感じているなら、それはすでに判断力が低下している証拠かもしれない。睡眠不足は感情のコントロール能力も損ない、交渉・意思決定・対人関係において確実にマイナスの影響を与える。

睡眠の質を劇的に上げる「光の管理」

本書が睡眠改善の最優先施策として挙げるのが、光のコントロールだ。朝、起床後30分以内に屋外の自然光を浴びることで、体内時計がリセットされ、夜の睡眠の質が向上する。逆に、就寝2時間前以降のスマートフォンやPCの画面光(ブルーライト)は、メラトニン分泌を妨げ、眠りの深さを損なう。

この2つの習慣は、お金も時間もほとんどかからない。しかし効果は絶大だ。朝の光を浴び、夜の光を減らす——この「光の管理」だけで、翌朝の目覚めと日中のパフォーマンスが変わると、著者は断言している。

ストレス管理——「ストレスをゼロにする」のではなく「慣らす」

慢性炎症がパフォーマンスを蝕む仕組み

本書のストレス論で重要な概念が「慢性炎症」だ。過度なストレスが続くと、体内では免疫系が過剰反応し、慢性的な炎症状態が続く。この状態は外からは見えないが、疲労感・意欲低下・集中力の散漫・気分の落ち込みとして現れる。

特に経営者が陥りやすいのは、「常に戦闘態勢」のストレス状態だ。交感神経が慢性的に優位になり、体は休んでいても「緊張したまま」になる。これが蓄積すると、回復力が著しく低下する。

「マインドフルネス」は精神論ではなく生理学的な処方箋

本書が推奨するストレス対策の一つが、マインドフルネス(瞑想)だ。「スピリチュアルな話か」と思う経営者も多いだろうが、本書の説明は徹底してエビデンスベースだ。1日10分の呼吸瞑想を8週間続けると、前頭前野の灰白質が増加し、感情コントロールと集中力が有意に向上したという研究が複数紹介されている。

加えて、自然の中で過ごすこと(グリーンエクサイズ)も、コルチゾール(ストレスホルモン)の低減に効果的とされている。都市部で忙しく働く経営者にとって、週末の公園散歩でさえ、科学的に意味のある「投資」になり得る。

えだもんが100社以上の経営者を見てきて気づいたこと

📝 えだもんの現場視点

私自身、14年で2,000冊以上のビジネス書を読んできたが、本書『最高の体調』は「読んで終わり」ではなく「読んでから体が変わった」数少ない一冊だ。特に睡眠と腸内環境の章は、支援先の経営者にも繰り返し紹介している。複数の社長から「あの本、読みました。朝の散歩始めました」と連絡が来るほど、行動変容につながりやすい実践的な内容だと感じている。

「体調管理」は経営者の最重要スキルだと断言できる

私はこれまで、九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走してきた。資金繰り、補助金、事業承継、法人化——さまざまな課題に向き合ってきたが、経営判断の質と経営者のコンディションには、明確な相関があると確信している。

状態の良い経営者は、リスクを適切に見極め、感情に流されず、長期視点で意思決定できる。逆に、慢性的な疲労を抱えた経営者は、目先の問題への反応が遅れたり、感情的な判断をしてしまったりするケースが目立つ。これはキャラクターの問題ではなく、体の状態が脳の機能に直結しているという生理学的な事実だ。

本書『最高の体調』は、経営者にとって「自己啓発書」ではなく、「経営インフラの整備書」として読むべき一冊だと私は位置づけている。

本書を読んで私自身が変えた3つの習慣

私自身、本書を読んでから実際に変えた習慣がある。

  • 朝起きたら10分以内に外に出て自然光を浴びる(近所を一周するだけでよい)
  • 昼食に必ず発酵食品(納豆か味噌汁)を加える(腸内環境の改善を意識)
  • 就寝1時間前にスマートフォンをシャットアウトする(睡眠の質が明らかに向上した)

どれも派手な施策ではない。しかし、この3つを2ヶ月続けた結果、午後の集中力が格段に上がり、支援先との打ち合わせで頭が「もつ」時間が長くなったと実感している。

経営者の体と脳は、最も大事な経営資産だ。ぜひ本書を手に取り、科学の力で自分のコンディションを再設計してほしい。

📚 この記事のまとめ

  • 慢性的な疲労・集中力低下は「文明病」であり、意志の問題ではない
  • 腸内環境を整える食事がメンタルとパフォーマンスに直結する
  • 週150分の有酸素運動と「座りっぱなし対策」で脳が活性化する
  • 朝の光・夜の暗さを管理するだけで睡眠の質が大きく変わる
  • マインドフルネスと自然体験はエビデンスに基づくストレス処方箋
  • 経営者の体調管理は「自己管理」ではなく「経営インフラの整備」だ

明日の一手

知識は行動に変えてはじめて価値を持つ。今日から1つだけ始めよう——小さな習慣が、3ヶ月後の経営判断の質を変える。

  1. 今夜、就寝1時間前にスマートフォンの画面をオフにする。代わりに紙の本か、照明を少し落とした部屋でストレッチを5分行う。たった今夜から始められる「光の管理」の第一歩だ。
  2. 今週中に、毎朝起床後10分以内に屋外へ出る習慣を試みる。ポストまで歩くだけでもよい。あわせて昼食に発酵食品(納豆・味噌汁・ヨーグルトのいずれか)を1品加える。この2つを1週間続けて、日中の集中力の変化を自分でチェックしてみよう。
  3. 1ヶ月後を目標に、週3回・1回20〜30分の早歩きを習慣化する。朝でも昼休みでも夕方でもよい。カレンダーに「運動」と書いて予定として確保することが継続のコツだ。あわせて就寝時刻を30分前倒しにする目標を立て、1ヶ月後の自分のコンディションと意思決定の変化を振り返ってみよう。

この記事の根拠と執筆背景

執筆者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。

執筆・更新日

執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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