メンバーがバラバラで一体感が出ないリーダーへ——『「僕たちのチーム」のつくりかた』に学ぶ、想いを束ねてチームを育てる方法

経営改善

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『「僕たちのチーム」のつくりかた』(伊藤 羊一)
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「朝礼でビジョンを語っても、みんな他人事みたいな顔をしている」

「採用してから3ヶ月、まだチームに馴染めていないスタッフがいる」

「売上目標は共有しているのに、なぜか一体感が生まれない」

こういった悩みを抱える経営者・リーダーは、じつに多い。数字や仕組みは整えた。でも、チームがひとつにならない。バラバラな個人が「僕たちのチーム」と感じる瞬間が、いつまで経っても来ない——。

その処方箋として、今回紹介したいのが伊藤羊一氏の著書『「僕たちのチーム」のつくりかた』だ。14年で2,000冊超のビジネス書を読んできた私(えだもん)が、中小企業経営者・個人事業主・起業家に強く勧めたい一冊である。

「チームがバラバラ」な本当の原因はどこにあるか

数字目標だけでは人はひとつになれない

多くのリーダーは、チームの一体感を高めようとするとき、まず「共通目標の設定」に走る。「今期は売上〇〇円達成」「顧客満足度No.1」——それ自体は正しい。しかし伊藤羊一氏はこの本で、「目標だけを共有しても、メンバーの心はつながらない」と明言している。

人は「何を達成するか」だけでなく、「なぜそれをするのか」「この仲間と一緒にいる意味は何か」を心の奥で問い続けている。その問いに答えを出せていないリーダーのチームは、外側だけ整っていて内側はバラバラ、という状態になりやすい。

「管理」と「マネジメント」の混同が一体感を壊す

本書が指摘するもうひとつの根本原因が、「管理」と「マネジメント」の混同だ。進捗を確認し、ミスを指摘し、ルールを守らせる——これは管理であり、チームを動かすことはできても、チームをつくることはできない。

マネジメントとは、メンバー一人ひとりの内側にある動機や想いを引き出し、それをチームの方向性と結びつけていく行為だ。この視点の転換こそが、本書を読む最初の収穫になるだろう。

「僕たちのチーム」とはどういう状態か——本書が描くゴール像

チームの定義:「目的・仲間・場」の三位一体

本書では、チームが機能している状態を「目的・仲間・場の三位一体」という言葉で表現している。

  • 目的:なぜ自分たちはここにいるのか、という問いへの共通の答え
  • 仲間:互いの強みと弱み、想いを知っている関係性
  • 場:本音で話せる心理的安全性のある環境

この三つが揃ったとき、人は初めて「僕たちのチームだ」と感じる。どれかひとつが欠けると、残りの二つが崩れていく。目的があっても仲間への信頼がなければ連携は生まれないし、仲間がいても語れる場がなければ想いは眠ったままになる。

「共感」がチームの接着剤になる

伊藤氏が本書で繰り返し強調するのが「共感」の力だ。メンバーが「この人の言っていること、わかる」「この目的、自分のこととして感じられる」と思える瞬間が、チームの接着剤になる。

共感を生むためにリーダーに必要なのは、カリスマ性でも説得力でもない。「自分の弱さや葛藤を率直に話せること」だと本書は言う。完璧なリーダー像を演じるより、「自分もここで悩んでいる」と開示するリーダーのほうが、メンバーの心を動かす。これは多くのリーダーにとって、耳が痛くも救いになる視点だろう。

想いを束ねる「リーダーの言葉」の使いかた

ビジョンは「語る」のではなく「一緒につくる」もの

本書の核心のひとつが、ビジョンのつくりかたにある。多くの経営者はビジョンを「自分が考え、メンバーに伝えるもの」と捉えている。しかし伊藤氏は「ビジョンはリーダーが語るものではなく、メンバーと一緒につくるもの」だと主張する。

一方的に下りてきた言葉は、どれだけ美しくても「上からのメッセージ」として受け取られる。自分たちが議論に参加し、意見を反映させたビジョンだからこそ、「自分ごと」になる。この一点だけでも、チームづくりの手法を根本から見直すきっかけになる。

「問いかけ」こそがリーダーの最強ツール

では具体的にどうやってメンバーの想いを引き出すのか。本書が提示するのが「問いかけ」の技術だ。

たとえば、こんな問いかけがある。

  1. 「あなたがこの仕事でいちばん大切にしていることは何ですか?」
  2. 「このチームがうまくいったとき、どんな状態になっていると思いますか?」
  3. 「あなたが一番貢献できると感じる場面はどこですか?」

これらの問いは、業績や数字には直接関係しないように見えて、実はメンバーの内側にある「動機の根」を掘り起こす。その根をリーダーが丁寧に聞き取り、チームの物語に織り込んでいく——これが「想いを束ねる」という行為の実態だ。

中小企業だからこそ、この手法が強力に効く理由

小さな組織ほど「関係の質」が業績に直結する

大企業には、システムや制度でカバーできる部分が多い。しかし中小企業・個人事業主・スタートアップでは、「人と人の関係の質」が、そのままビジネスの質に直結する。

5人のチームでひとりが「なんかここ、居場所ないな」と感じていたら、その影響は組織全体に波紋のように広がる。逆に、10人全員が「この仲間となら頑張れる」と感じているチームは、同規模の競合と比べて圧倒的な推進力を持つ。

100社以上の中小企業を支援してきた経験から言えば、業績が安定して伸びている会社の共通点は、財務体質の良さよりも先に「チームの関係の質の高さ」にある。数字はその後からついてくる。

「採用コスト」より「関係コスト」に投資せよ

人が定着しない、育たない、という悩みを持つ経営者は多い。そこでよく行われるのが採用基準の見直しや待遇改善だ。もちろん必要な施策ではある。しかし本書が示唆するのは、「関係の質に投資すること」の重要性だ。

どんなに優秀な人材を採用しても、そこにチームとしての関係性がなければ、能力の半分も発揮されずに辞めていく。一方、チームの関係性が高い組織は、多少のスキル不足を仲間がカバーし合い、人が育ちやすい土壌になる。採用費に100万円かけるより、チームの関係性を高める仕組みに30万円かけたほうが、長期的なリターンははるかに大きい。

えだもんの現場視点:支援現場で見てきたチームの明暗

「一体感のあるチーム」と「バラバラなチーム」を分けたもの

100社以上の経営者に伴走してきたなかで、チームがうまく機能している会社と、そうでない会社の違いを何度も目の当たりにしてきた。表面上は似たような業種・規模・売上であっても、チームの「空気」はまったく違う。

うまくいっているチームのリーダーに共通するのは、本書が言うところの「問いかけ」の習慣だ。朝礼で一方的に指示を出すのではなく、「最近、仕事でどんなことが気になってる?」「このやり方、みんなどう思う?」と、小さな問いかけを日常的に行っている。その積み重ねが、チームの心理的安全性を育てていく。

🔍 えだもんの現場視点①

支援先の建設業の社長から「うちの職人、言ったことしかやらない」という相談を受けたことがある。現場を見ると、社長は数字と指示しか話していなかった。試しに朝礼で「この現場で自分がいちばん誇りに思う仕事は?」と問いかけてもらったところ、ベテラン職人が初めて自分の言葉で語り出した。社長は「こんなこと考えてたのか」と驚いていた。問いかけひとつで、関係性は変わる。

ビジョンを「一緒につくる」ことで変わった組織の話

ある飲食業の経営者を支援したとき、年度初めに「今期のテーマを全スタッフで決める会議」を設けることを提案した。最初は「うちのスタッフに経営のことを話しても…」と懐疑的だったが、実際にやってみると、パート社員から「お客様に名前を覚えてもらえる店にしたい」という言葉が出た。

その言葉は結局、その年の合言葉になり、スタッフ全員が名前で常連客を呼ぶ文化が生まれた。売上も上がったが、それより先にスタッフの離職率が下がった。「自分の言葉がチームの方向性に反映された」という体験が、帰属意識を劇的に高めたのだ。これはまさに本書が言う「ビジョンを一緒につくる」実践例だった。

🔍 えだもんの現場視点②

飲食業の別の支援先では、採用を繰り返しても3ヶ月で辞めるという悩みが続いていた。経営者と話すと、入社後のオンボーディングが「マニュアル渡して終わり」だった。本書の「場をつくる」視点から、入社1週目に「あなたがここで実現したいこと」を聞く面談を導入。3ヶ月後、定着率が明らかに上がった。採用コストより関係コストへの投資の効果を、数字で実感した瞬間だった。

この本をどう読むか——えだもんの活用法

「今のチームの課題」を紙に書いてから読み始める

本書を最大限に活用するためにお勧めしたい読み方がある。それは、読む前に「今のチームで自分が感じている課題」を3つ、紙に書き出すことだ。

「なぜか一体感がない」「特定のメンバーが浮いている」「自分のビジョンが伝わっていない気がする」——どんな課題でもいい。それを手元に置いた状態で本書を読むと、「これはあのメンバーのことだ」「この問いかけ、明日試してみよう」と、具体的な行動イメージが頭の中に生まれやすくなる。

チームメンバーと「一緒に読む」という使いかた

本書は経営者やリーダーだけが読む本ではない。むしろ、チームメンバー全員で読んで感想を語り合うこと自体が、チームづくりの実践になる。

「この本の中で、自分がいちばん刺さったフレーズはどれ?」という問いかけをミーティングで投げかけるだけで、普段は出てこないメンバーの内面の声が出てくることがある。本を媒介にすることで、普段言いにくいことが言いやすくなる——これも「場をつくる」ひとつの方法だ。

🔍 えだもんの現場視点③

私自身、レフティ合同会社のメンバーや連携パートナーとの関係構築に本書の問いかけを活用している。特に「あなたがこの仕事でいちばん大切にしていること」という問いは、初対面の相手との信頼構築にも効く。相手の「動機の根」を知ることで、仕事の依頼の仕方も変わるし、お互いの期待値のズレも減る。チームが社内に限らない時代だからこそ、この技術の応用範囲は広い。

チームをひとつにするのは、カリスマでも強制力でもない。一人ひとりの想いを丁寧に聞き、それをチームの方向性と結びつけていくリーダーの姿勢だ。本書はその実践的な地図になる一冊だと、強く断言できる。

ぜひ、手元に置いて何度も開いてほしい。

📖 この記事で紹介した書籍

『「僕たちのチーム」のつくりかた』(伊藤 羊一)
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明日の一手

本を読んで「いい話だった」で終わらせないために、今日・今週・来月の3ステップで行動を決めよう。小さな一歩が、チームの空気を確実に変えていく。

  1. 今日、チームメンバーのうち誰かひとりに「最近、仕事でいちばん気になっていることは何?」と聞いてみる。評価や指示をする必要はない。ただ聞いて、最後まで話を聞き切るだけでいい。その一問が、関係性の扉を静かに開く。
  2. 「なぜ自分はこのビジネスをやっているのか」「チームとして何を実現したいのか」をA4用紙1枚に書き出す。完成度は問わない。自分の生の言葉で書くことが、メンバーへの語りかけの出発点になる。書いたものを誰かひとりに見せてみると、さらに効果が上がる。
  3. 月1回、業績レビューではなく「チームとして何がよかったか、何を変えたいか」だけを話し合う30分の振り返り会議を定例化する。議事録より「誰がどんな言葉を言ったか」を残すことを意識する。この積み重ねが、チームに「自分たちの物語」を育てていく。

この記事のまとめ(Q&A)

チームの一体感が出ないのはなぜ?

『「僕たちのチーム」のつくりかた』によると、目標だけを共有してもメンバーの心はつながらないことが一因です。人は「何を達成するか」に加えて「なぜそれをするのか」「この仲間といる意味は何か」を心の奥で問い続けています。また、進捗確認やルール順守を求める「管理」と、一人ひとりの動機や想いを引き出してチームの方向性と結びつける「マネジメント」が混同されると、一体感は生まれにくくなります。

「僕たちのチーム」と感じられる状態とは?

本書では、チームが機能している状態を「目的・仲間・場の三位一体」で表しています。目的は「なぜここにいるのか」への共通の答え、仲間は互いの強みや弱み、想いを知っている関係性、場は本音で話せる心理的安全性のある環境です。三つが揃うと「僕たちのチームだ」と感じやすくなり、どれかが欠けると残りも崩れやすくなります。

メンバーの想いを束ねてチームを育てるには?

本書が示すのは、ビジョンをリーダーが一方的に語るのではなく、メンバーと一緒につくることです。あわせて、「あなたがこの仕事でいちばん大切にしていることは何ですか?」のような問いかけで、メンバーの動機の根を引き出します。リーダーが自分の弱さや葛藤を率直に話すことも共感を生みます。まずは誰かひとりに「最近、仕事でいちばん気になっていることは何?」と聞き、最後まで聞き切ることから始められます。

この記事の根拠と執筆背景

執筆者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。

執筆・更新日

執筆: 2026-06-16 / 最終更新: 2026-06-16

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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