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『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』(赤羽雄二)
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「あの件、どう判断すればいいんだろう……」と悩んだまま、気づけば夜になっている。そんな経験に心当たりはないだろうか。
中小企業の経営者や個人事業主は、毎日無数の判断を迫られる。採用するか否か、取引先との条件交渉をどう進めるか、新規事業に踏み込むかどうか——。一つひとつは小さな判断でも、それが積み重なると「考えすぎて行動できない」という慢性的な状態に陥りやすい。
私(えだもん)は中小企業診断士として九州を中心に100社以上の経営者に伴走してきたが、この「判断の遅さ」「思考の渋滞」は、業種や規模を問わずほぼすべての経営者が抱える共通課題だと実感している。
その解決策として、今回紹介したいのが赤羽雄二氏の著書『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』だ。A4用紙とペン一本で実践できるシンプルなトレーニングが、経営者の思考スピードを根本から変える可能性を持っている。
なぜ経営者は「考えすぎて動けなくなる」のか
📝 えだもんの現場視点
支援先の建設業の社長は、現場気質で「自分一人でなんとかする」という信念が強く、課題を紙に書き出すことも誰かに話すこともしなかった。その結果、資金繰りの不安・採用の悩み・取引先との関係修復という三つの問題が頭の中で同時進行し、どれも前に進まないまま半年が経過していた。「考えているのに決まらない」ではなく、「考えているつもりで堂々巡りしていた」というのが実態だった。
思考の渋滞は「頭の中で考え続けること」が原因
赤羽氏はマッキンゼーで14年間活躍し、その後スタートアップ支援や経営コンサルティングを手がけてきた。同書の冒頭で氏が指摘するのは、「頭の中だけで考えていると、思考はいつまでも堂々巡りを繰り返す」という事実だ。
人間の脳は、問題を「保留」するのが得意ではない。一度気になったことは無意識のうちに何度もリピート再生される。その結果、本来10分で決められることに1時間も2時間もかけてしまう。これが「思考の渋滞」の正体だ。
経営者特有の「完璧主義的判断」が思考を止める
さらに経営者には、もう一つの落とし穴がある。「自分の判断がスタッフや会社全体に影響する」というプレッシャーから、必要以上に完璧な答えを求めてしまうのだ。
しかし現実の経営において、完璧な情報が揃ってから判断できる場面などほとんどない。不完全な情報の中でスピーディに仮判断を下し、走りながら修正していく能力こそが、経営者に求められる思考力の本質だ。赤羽氏はこれを「ゼロ秒思考」と呼んでいる。
「ゼロ秒思考」とは何か——書籍の核心を解説する
頭の中を「外に出す」という発想の転換
本書が提唱するトレーニングは驚くほどシンプルだ。
- A4用紙を横向きに置く
- 左上にタイトル(今抱えている問いやテーマ)を書く
- 右上に日付を書く
- タイトルに対する答えや考えを、4〜6行、1行20〜30文字程度で書き出す
- 1枚を1分以内に書き終える
これを毎日10枚、10分間続ける。それだけだ。
ポイントは「1分以内」という制約にある。時間制限を設けることで、脳は「完璧な答えを探す」モードから「今考えていることを吐き出す」モードに切り替わる。この切り替えが、思考の渋滞を解消する鍵となる。
「書く」ことで思考が整理されるメカニズム
赤羽氏は本書の中で、メモ書きによって次の効果が得られると説明している。
- 感情の言語化:モヤモヤした不安や怒りの正体が明確になる
- 問題の構造化:複雑に絡み合った課題が整理されてシンプルに見える
- 深掘り思考:同じテーマで複数枚書くことで、表層から本質へと思考が深まる
- 判断の蓄積:書いたメモが「思考の資産」として積み上がる
頭の中にある情報を外に出すことで、脳はその情報を「処理済み」として扱えるようになる。結果として思考のワーキングメモリが解放され、新たな判断のための余裕が生まれるのだ。
「ゼロ秒」になるまでのプロセス
タイトルにある「ゼロ秒思考」とは、文字通り0秒で答えが出ることを意味するのではない。日々のメモ書きを通じて思考のパターンを蓄積し、同種の問題に直面したとき「以前考えたことがある」という状態を作り出すことで、判断までの時間を限りなくゼロに近づけるという概念だ。
毎日10枚を続けると、1ヶ月で約300枚のメモが溜まる。その積み重ねが、経営判断のデータベースとなる。
えだもんが100社以上の支援現場で見てきたこと
「決断できない経営者」の共通点
九州を中心に100社以上の中小企業・個人事業主に伴走してきた中で、私が強く感じてきたことがある。それは、業績が伸び悩む会社の経営者ほど、一人で頭の中だけで考え続けているという点だ。
支援先の建設業の社長がまさにそのタイプだった。現場の職人気質で「自分一人でなんとかする」という信念が強く、課題を誰かに話すことも、紙に書き出すこともしなかった。その結果、資金繰りの不安・採用の悩み・取引先との関係修復という三つの課題が頭の中で同時進行し、どれも前に進まないまま半年が過ぎていた。
「書く習慣」を導入した経営者の変化
私自身、14年でビジネス書を2,000冊以上読んできた中で、この『ゼロ秒思考』は特に実践頻度が高い一冊だ。特に新規クライアントとの初回面談前や、補助金申請の方向性を整理するときなど、「思考をまとめたい」場面でA4メモ書きを活用している。
あるIT系の個人事業主には、法人化のタイミングで迷っていた際にこのメモ書きを勧めた。「法人化するメリットは何か」「法人化しないリスクは何か」「1年後の自分はどうなっていたいか」といったテーマで3日間書き続けてもらったところ、4日目には「やっぱり今期中に法人化します」と自分で結論を出してきた。外部からの正解を求めるのではなく、自分の中にある答えを引き出す——それがこのメソッドの真骨頂だと感じた瞬間だった。
経営者がA4メモ書きを実践するときの具体的なやり方
📝 えだもんの現場視点
法人化のタイミングで迷っていたIT系の個人事業主に、A4メモ書きを勧めたことがある。「法人化するメリットは」「しないリスクは」「1年後の自分はどうなりたいか」をテーマに3日間書き続けてもらったところ、4日目に「今期中に法人化します」と自分で結論を出してきた。外部の正解を求めるのではなく、自分の中にある答えを引き出す——その力をこのメソッドは持っている、と実感した支援事例だった。
経営者向けのテーマ設定のコツ
本書では、メモ書きのテーマとして日常の感情や問題を幅広く扱うことを推奨している。経営者が特に活用しやすいテーマ例を以下に挙げる。
- 「今週一番気になっていることは何か」
- 「○○の案件を前に進めない理由は何か」
- 「売上が伸びない本当の原因は何か」
- 「あのスタッフへの対応で感じたモヤモヤは何だったか」
- 「補助金申請を後回しにしている本当の理由は何か」
- 「5年後の会社をどうしたいか」
ポイントは、「正しい答えを書こう」とせず、「今自分が感じていること・思っていることを吐き出す」という姿勢で書くことだ。誰かに見せるものではないので、乱暴な言葉や感情的な内容でも構わない。
道具と時間の整え方
本書が推奨する道具はシンプルだ。
- 用紙:A4コピー用紙(罫線なし)を横向きに使う
- ペン:0.5mm程度のボールペン(書きやすいものならなんでもよい)
- 時間:毎日10分、できれば朝一番か、業務開始前の静かな時間帯
「タブレットやPCではダメか」という質問をよく受けるが、赤羽氏は手書きにこだわることを勧めている。手を動かすことで思考と感情が連動しやすくなるという理由だ。実際に私も試してみて、キーボード入力より手書きのほうが「本音」が出やすいと実感している。
続けるための「ハードルの下げ方」
「毎日10枚」というノルマに構えてしまう人もいるが、最初は1日3枚・3分から始めても十分効果がある。大切なのは完璧な実践より、継続することだ。
私が支援先に勧める際は、「朝の手帳を開く前に、A4用紙1枚だけ書いてみてください」という形で始めてもらうことが多い。1枚書くと「もう1枚」と自然に手が動くようになる。習慣化には最初の「摩擦を下げる設計」が重要だ。
伴走型CFOとして感じる「思考力×財務感覚」の相乗効果
経営判断の質はアウトプットの量で決まる
補助金申請・資金繰り・法人化・事業承継——私が専門とする領域はいずれも、経営者の意思決定の質が結果を大きく左右する分野だ。
どれだけ優れた補助金スキームを提案しても、経営者が「でも、うちには難しいんじゃないか……」と思考を止めてしまえば前に進まない。逆に、日頃からメモ書きで思考を鍛えている経営者は、新しい情報を受け取ったとき「自社にどう使えるか」を即座に考え始める。この反応速度の差が、数年後の経営格差に直結する。
事業承継の支援をしていた製造業の社長は、後継者問題を「考えると頭が痛くなる」と言って数年間先送りにしていた。しかしメモ書きを3週間続けた後、「書いていたら、自分が本当は誰に継がせたいのかが見えてきた」と話してくれた。頭の中で答えを探すのをやめ、紙の上で思考を動かし始めた瞬間に、長年の膠着が解けた典型例だった。
「選書メディア・本で解く」運営者として伝えたいこと
私が運営する選書メディア「本で解く」のコンセプトは、「経営課題を本で解く」ことだ。2,000冊以上のビジネス書を読んできた中で確信しているのは、良書は経営コンサルタントより安く、より深く、経営者の思考を変えるという事実だ。
『ゼロ秒思考』はその中でも特に、「読んで終わり」ではなく「実践して変わる」タイプの一冊だ。1,500円程度の本と、毎日10分のA4メモ書きで、経営判断のスピードと質が変わるなら、これほどコスパの高い投資はない。
明日から始める「ゼロ秒思考」——経営者のための実践ロードマップ
📝 えだもんの現場視点
事業承継の支援をしていた製造業の社長は、後継者問題を「考えると頭が痛くなる」と言って数年間先送りにしていた。試しにメモ書きを3週間続けてもらったところ、「書いていたら、自分が本当は誰に継がせたいのかが見えてきた」と話してくれた。頭の中で答えを探すのをやめ、紙の上で思考を動かし始めた瞬間に、長年の膠着が解けた。100社以上を見てきて、「書く習慣」が経営者の思考を最も速く変えると確信している。
今日・今週・1ヶ月後の行動設計
「いつかやろう」は永遠に来ない。今日の10分が、1ヶ月後の思考力を変える。具体的な行動ステップを以下に整理した。
【今日できること】
A4用紙を10枚手元に用意し、今一番頭を占領している悩みや課題をタイトルに書いて、1分以内に4〜6行書き出す。まず1枚だけ。それだけでいい。
【今週中に試せること】
毎朝の業務開始前5分を「メモ書きタイム」として確保し、1日3枚を目標に実践する。テーマは「今週気になっていること」「昨日判断できなかったこと」など、実際の経営課題から選ぶ。
【1ヶ月後を目標にする習慣化】
1日10枚・10分のペースに移行し、書いたメモをテーマ別に分類して振り返る時間を週1回設ける。「採用」「資金」「人間関係」などカテゴリが見えてくると、自社の経営課題の全体像が浮かび上がってくる。
この本が「効く」経営者のタイプ
最後に、この本が特に効果を発揮しやすい経営者のタイプをまとめておく。
- 決断まで時間がかかり、スタッフや取引先を待たせがちな方
- 課題は分かっているのに行動に移せず、気づけば後回しになっている方
- 感情的になりやすく、冷静な判断ができていないと自覚している方
- 経営の悩みを誰にも話せず、一人で抱え込みがちな方
- 忙しすぎて「考える時間がない」と感じている方
逆に言えば、これらに一つでも当てはまるなら、この本を手に取る価値は十分にある。
A4用紙とペン一本。それだけで始められるトレーニングが、あなたの経営判断を変えるかもしれない。
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『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』(赤羽雄二)
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明日の一手
「いつかやろう」は永遠に来ない。今日の10分が、1ヶ月後の思考力を変える。まず一歩を具体的に設計しよう。
- 今日の業務を始める前に、A4用紙を1枚横向きに置き、「今一番頭を占領している悩みや課題」をタイトルに書いて、1分以内に思いつくことを4〜6行書き出す。上手く書こうとしなくていい。まず1枚だけ。それだけでこのトレーニングは始まっている。
- 毎朝の業務開始前5分を「メモ書きタイム」として固定し、1日3枚を目標に実践する。テーマは「今週気になっていること」「昨日判断できなかったこと」「あの件を後回しにしている本当の理由」など、実際の経営課題から選ぶ。書いたメモは捨てずに日付順に重ねて保管しておく。
- 1日10枚・10分のペースに移行し、書いたメモを週1回だけ見返す時間を設ける。「採用」「資金」「人間関係」「将来ビジョン」などテーマ別に分類すると、自社の経営課題の全体像と自分の思考グセが浮かび上がってくる。この「思考の地図」が、ゼロ秒判断の土台になる。
この記事の根拠と執筆背景
執筆者について
枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士。九州を中心に100社以上の中小企業経営者に伴走支援を実施。補助金・資金繰り・組織づくり・事業承継が専門領域。14年でビジネス書2,000冊超を読破し、選書メディア「本で解く」(hondetoku.jp)を運営。レフティ合同会社 代表。
執筆・更新日
執筆: 2026-06-11 / 最終更新: 2026-06-11

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