中小企業経営者の「資金繰り」Q&A5選|菅原由一『激レア資金繰りテクニック50』より現場で使えるもの

経営改善

この記事の読み方

中小企業診断士として伴走支援をしていると、資金繰りの相談で繰り返し聞かれる質問が5つあります。この記事では、菅原由一さんの『激レア資金繰りテクニック50』と、現場の実感を合わせて、Q&A形式で答えます。

1問30秒で読めるように整理しました。気になるQだけ読んでもOKです。

Q1. 「無借金経営」は本当に理想ですか?

A. 理想ではありません。むしろ、危険な経営です。

本書が最も強く主張しているのが、「無借金経営がいい」は幻想だという点です。手元のキャッシュがなければ、売上が止まった瞬間に会社は終わります。コロナ禍で明らかになったように、危機は突然来ます。

僕が支援している会社でも、無借金経営を貫いていた会社が、一時的な売上減少で一気に資金繰りに苦しむパターンを何度も見てきました。逆に、普段から適度な借入を持ち、手元キャッシュを厚くしている会社の方が、危機に強い。

本書が教える「固定費6ヶ月分の現金」という基準は、中小企業にとって目指すべき水準です。

Q2. 「決算書が黒字」ならば資金繰りは大丈夫ですか?

A. 大丈夫ではありません。黒字倒産は実在します。

決算書(P/L)の利益と、手元の現金は別物です。売掛金が回収できていない、在庫が増えている、設備投資で現金が出ている——これらは P/L では「資産」として扱われますが、実際には現金が自分の手元にありません。

本書がキャッシュフロー表の重要性を強調しているのは、この P/L と現金の乖離を防ぐためです。黒字なのに毎月末に振込で苦しい会社は、キャッシュフローが悪化しているサインです。

Q3. 銀行から「借入を減らせ」と言われたら従うべきですか?

A. 場合によります。まず、なぜ言われているかを確認してください。

銀行員が「借入を減らせ」と言う場合、2つの理由が考えられます。1つ目は、会社の財務が悪化しているから。2つ目は、銀行内部の貸出方針が変わったから。

前者なら、原因を根本から改善する必要があります。後者なら、別の銀行への借換を検討する余地があります。本書が推奨する「複数行取引」が、この判断を可能にします。1行だけの取引だと、銀行の方針に振り回されます。

事例:借換一本化で1億を15年に引き直した福祉施設の話

僕が支援した福祉施設の事例です。過去の多角化で借入のタイミングがバラバラ、返済額が減価償却費を上回る状態でした。メインバンク1行での取引だったため、条件変更の選択肢が限られていた。

国の借換一本化制度を活用し、1億弱の借入を新規の金融機関経由で15年の長期に引き直しました。37歳の2代目社長が2年間遅れなく返済してきた実績が交渉の武器になった。

結果、返済ペースが減価償却費同等水準に落ち、月60万円のキャッシュが手元に残るようになりました。メインバンクに振り回されず、自社の財務計画に合った返済ペースを作れた事例です。

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Q4. 創業期・赤字期でも借入はすべきですか?

A. 可能なら借りておくべき。ただし、借り方のタイミングが重要です。

補足事例として、僕が2024年秋から支援している不動産関連の小さな法人(代表+従業員1名・年商5,000万未満・34歳社長)のケースを紹介します。この会社は創業3年目で、本書の原則に反して「借入を積極的にはしない」選択をしています。理由は、事業の粗利率が35%を超えており、運転資金が内部キャッシュで回る構造だから。本書は「借りられる時に借りる」を原則としていますが、業態・粗利率によっては借入ゼロの健全運営も成立するという反例です。

本書は「借りられる時に借りる」を原則としていますが、創業期の会社にはもう少し丁寧な戦略が必要です。

創業時:日本政策金融公庫の創業融資は、ほぼ一択。金利が低く、融資条件も比較的緩やか。開業から6ヶ月以内が最も受けやすい。

創業2〜3年目:業績が出揃ってきた段階で、メインバンクと取引を始める。この時期に少額でもいいから借入実績を作ることが、将来の大型融資の礎になります。

赤字期:既存の借入の条件変更(リスケ)を交渉する前に、補助金・助成金の活用を検討する。融資と補助金の使い分けが経営者の腕です。

Q5. 税金を分割で払ったら、融資にどう影響しますか?

A. 影響します。できるだけ避けるべきです。

本書も指摘する通り、税金の分割納付や延納の記録は、銀行の評価を大きく下げます。「この会社は資金繰りが苦しい」というシグナルとして受け取られるためです。

もし今、税金の納付が厳しい状況なら、税務署に分割を申し出る前に、銀行に運転資金の借入を相談する方が賢明です。一時的な借入で税金を満額納付し、借入は計画的に返済する。この方が銀行評価が保たれます。

ただし、既に分割記録がある会社は、この記録が消えるまで3〜5年かかります。本書のテクニックを使う前に、まずこの期間の耐え方を設計する必要があります。

本書を読む順番の提案

『激レア資金繰りテクニック50』は50章構造ですが、全部を順に読む必要はありません。中小企業経営者としての優先順位は次の通りです。

  1. 序章〜第1章(借りる意義)
  2. 借換に関する章(第2章のうち借換系)
  3. 複数行取引に関する章
  4. 減価償却・資産管理に関する章
  5. その他は必要に応じて

この順番で読むと、本書の核心が最短で掴めます。

明日の一手:メインバンク以外の金融機関を1つ調べる

ここまで読んでくれた経営者に、具体的な一歩を提案します。

明日、地域の信用金庫・信用組合のHPを1つ開いて、融資商品と窓口担当を確認してください。相談に行く必要はまだありません。「もう1行と付き合う」可能性があることを知るだけで、メインバンクとの関係も対等になります。

本書の50のテクニックを試すには、この「選択肢の存在」が前提になります。

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この記事の根拠と執筆背景

主要な参考書籍

本記事は菅原由一 著『激レア資金繰りテクニック50』を主要な参考書籍としています。本書の核心的な主張(無借金経営の幻想・複数行取引・借換の戦略)を、中小企業経営者からのよくある質問5つに翻訳しました。

引用した支援事例について

  • 事例: 福祉施設における2024年秋〜現在の借換支援に基づきます。37歳2代目社長。借換一本化で1億弱を15年引き直し、月60万円のキャッシュフロー改善。社名・個人名は匿名化。

執筆日・最終更新日

執筆: 2026-04-20 / 最終更新: 2026-04-20

著者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士、複数法人経営者。九州中心に資金繰り改善・銀行交渉・経営改善の伴走支援を実施。

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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