診断士資格を活かす「副業→独立」ロードマップ|長尾一洋『年収1億稼ぐ方法』に現役診断士が追加する準備フェーズ

キャリア・複業

いきなり独立の成功確率は意外に低い

中小企業診断士の資格を取得すると、多くの人が独立を検討します。会社員時代の年収より高い報酬、時間の自由、専門家としての働き方。魅力的に見えます。

ただ、資格取得後すぐに独立した人の成功確率は、実は高くありません。独立2年以内に廃業・会社員復帰する人が約4割というデータもあります。長尾一洋さんの『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』は独立後の戦略に詳しい名著ですが、独立前の準備フェーズについての記述は手薄です。

この記事では、現役診断士として複数法人を経営している立場から、本書に追加すべき「独立前の準備2年間」のロードマップを整理します。副業から始めて、確実に独立へ移行する道筋です。

フェーズ0:資格取得直後(0〜3ヶ月)

資格取得後の最初の3ヶ月でやるべきは、独立の意思決定を急がないことです。多くの人がこの時期、勢いで独立に動きます。しかしこの時期は、診断士としての実力が未知数で、顧客基盤もゼロ。判断材料が足りません。

この3ヶ月でやるべきこと

  • 診断士協会(都道府県支部)に登録し、先輩診断士との交流を始める
  • 実務補習で他の診断士と共同作業を経験する
  • 自分の得意領域の仮説を立てる(副業で試すテーマ)
  • 副業を会社に申請する(就業規則で可能なら)

独立に向けた情報収集と、副業の土台作りの期間です。

フェーズ1:副業で実績を作る(4ヶ月〜1年)

フェーズ0で副業が可能な状態になったら、副業で診断士業務を試すフェーズに入ります。会社員の給与を確保したまま、土日や平日夜にコンサル業務を始める。

副業で取る案件の種類

現役診断士として経験から言うと、副業で受けやすい案件は次の通りです。

  1. 中小機構のよろず支援拠点経由の単発相談(1回2〜3時間)
  2. 商工会議所・商工会の専門家派遣(1回2〜4時間)
  3. 小規模事業者持続化補助金の申請支援(1件5〜15万円)
  4. 知人経由の経営相談(1時間5,000〜10,000円)

これらは副業として週末に対応可能で、独立後の本業に繋がる実績になります。

副業の目標

1年間の副業で目指すのは、次の2つです。

  • 10〜20件の支援実績を作る
  • 月次で10〜20万円の副業収入を得る(生活費の一部を賄える水準)

この状態を作れれば、独立の判断材料が揃います。

フェーズ2:独立準備(1〜2年目)

副業で実績を積んだら、独立に向けた具体準備に入ります。

この時期の準備項目

僕が独立準備期にやったこと、そして今の僕なら追加で推奨することを整理します。

  1. 法人設立(個人事業主でも可、法人の方が税制有利)
  2. 小規模企業共済に加入(将来の退職金設計)
  3. 事務所の確保(自宅で十分、カフェ活用も可)
  4. 会計事務所と契約(年契約10〜20万円程度)
  5. ホームページ・SNS発信の開始
  6. 既存顧客との関係性整理(独立後の第一契約候補)

独立のタイミングを決める基準

本書が示唆する独立判断基準を、現実的にまとめると次の通りです。

  • 副業収入が月20万円を3ヶ月連続で超えている
  • 独立直後の3〜6ヶ月の固定収入見込みがある(既存顧客の月額契約)
  • 生活防衛資金(生活費1年分)が確保されている

この3つが揃った時点が、独立のタイミングです。勢いで決めず、数字で判断する。

事例:会社員時代の副業から独立した僕自身の経験

具体事例として、僕自身の独立経験を話します。2010年代半ば、会社員(経営コンサルタント業)をしながら中小企業診断士の副業を開始。その後、複数法人を経営する形で独立しました。

独立直後の失敗として、最初の単価設定が低すぎたことがあります。副業時代の低単価(時給5,000円程度)の感覚で独立後も受注してしまい、時間ばかりかかって収入が伸びない時期が半年ほど続きました。

この失敗から学んだのは、独立前に「独立後の目標単価」を明確にしておく重要性です。僕の場合、独立1年目で時給15,000円、2年目で時給20,000円、3年目で月額顧問契約中心という目標を設定し、段階的に単価を上げていきました。

現在は月額顧問契約を10社以上抱える状態で、副業時代とは比較にならない収入と安定性を実現しています。副業から独立への移行期に、もっと早く単価設計を固めていれば、1年以上時間を短縮できたと思います。

本書を独立準備期に読むコツ

本書は独立後の戦略が中心ですが、副業・独立準備期に読むと以下の章が特に効きます。

  • 専門領域の絞り込みに関する章(副業でテーマを決める参考に)
  • 料金設計に関する章(独立直後の単価を設定するため)
  • 顧客獲得に関する章(副業で実績を作る方法として)

逆に、月額顧問契約・長期クライアント開拓の章は、独立1年目以降でOK。段階的に読む順序を変えると、本書の価値を最大化できます。

明日の一手:副業可能性を会社の就業規則で確認する

ここまで読んでくれた診断士(または志望者)に、明日できる一歩を提案します。

会社員の方は、明日、自社の就業規則で副業が可能かを確認してください。可能なら、人事に副業申請の手順を聞く。不可能なら、副業可能な会社への転職または資格取得までの準備期間の使い方を考える。

独立の道は、副業から始める方が圧倒的に安全です。この確認が、独立準備のフェーズ0の第一歩です。

この記事の根拠と執筆背景

主要な参考書籍

本記事は長尾一洋 著『中小企業診断士になって「年収1億」稼ぐ方法』の独立後戦略に、現役診断士としての独立準備期の経験を補足して整理しました。

引用した支援事例について

本記事では、著者自身(枝元)の独立経験を中心に記載しています。特定の支援先の事例ではなく、自己体験に基づきます。

執筆日・最終更新日

執筆: 2026-04-20 / 最終更新: 2026-04-20

著者について

枝元 宏隆(えだもん)。中小企業診断士、複数法人経営者。九州中心に資金繰り改善・事業承継・補助金活用の伴走支援を実施。

えだもん (中小企業診断士)

中小企業診断士/連続起業家。21歳で起業、以来14年でビジネス書2,000冊超を読破。実務で効いた本だけを紹介する「課題突破の選書エージェント」運営者。

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